未だに日本の政治において深刻な問題として尾を引く「政治とカネ」。先日行われた東京都議会選でも、都議会自民党の裏金問題が注目を集めました。政治資金の透明性が改めて問われる中、民間が開発したあるウェブサイトが、政治家のお金の流れを「可視化」し、新たな一石を投じています。この記事では、この問題の現状と、その画期的な取り組みについて掘り下げます。
政治資金の透明化をイメージしたAIイラスト
東京都議会での「裏金」問題の背景
東京都議会自民党の裏金問題は、2019年と22年の政治資金パーティーに端を発します。都議一人あたりに配布されたパーティー券100枚(1枚2万円)のうち、50枚(100万円分)が販売ノルマとされ、26人の都議がノルマ超過分の収入を政治資金収支報告書に記載しなかったとされています。これは、いわゆる「中抜き」と呼ばれる手法です。さらに、政治団体「都議会自民党」でも1089万円の不記載が発覚しました。この問題は東京新聞の調査報道によって明るみに出ました。国会議員が裏金問題を「派閥の指示」「秘書がやった」などと弁明する中、都議の場合は自らがパーティー券を販売していた点で異なります。しかし、事務局はどこに何枚売られたか関知せず、都議も報告しなかったため、意図的な「不記載」、すなわち「裏金」が生じたと言えます。責任を取ったのは会計担当職員のみでした。
裏金が民主主義に与える影響
では、この「裏金」の何が問題なのでしょうか? 最も注目すべきはその使い道です。もし裏金が、自身の立場を有利にするためや、不正な集票活動に使われていたとすれば、それは選挙という民主主義の根幹を揺るがす行為に他なりません。裏金は、民主主義が正しく機能するのを妨げるのです。問題発覚後、多くの都議が「使っていない」と弁明しましたが、後になって「嘘だった」「使っていた」と証言を翻す者も現れました。十分な説明責任を果たさないまま選挙に出馬した候補者や、「きれいごとだけでは政治ができない」と発言する人物もおり、その姿勢は多くの批判を呼びました。
民間主導の政治資金検索サイトが登場
こうした状況が進展を見せない中、先日、筆者がコメンテーターとして出演したTBS系の『news23』で興味深い特集が組まれていました。それは、民間の方々が、政治家のお金の出入りを誰でも簡単に調べられるウェブサイトを開発したという内容です。このサイトでは、国会議員がどのような企業や政治団体から献金を集め、その資金をどのように使ったのかを、データベースから検索できます。例えば「石破茂」氏の名前で検索すると、2023年度の収入総額やその内訳が表示されます。番組本番中に「すし」と検索したところ、会合に使われた寿司屋の情報がすぐに表示され、その透明性の高さに驚きました。これはまさに画期的な取り組みと言えます。
なぜ民間任せなのか? 公開の意義と課題
本来、政治家は自らの意思で公人となった存在であり、説明できないお金があってはならないはずです。しかし、現在の政治資金収支報告書は、一般市民が容易に調べられる仕組みになっていません。これまでの裏金問題の発覚も、神戸学院大学の上脇博之教授のような個人のマンパワーに頼る部分が大きかったのが実情です。これはどう考えても改善されるべき点です。民間発のこのような検索サイトは、「なぜ国がやらないのか」という当然の疑問を抱かせつつも、政治家側に緊張感を与える役割を果たします。一般市民にはマイナンバー制度やインボイス制度で収入や活動がすぐに可視化されるのに、公人である政治家だけが「きれいごとでは政治はできない」という論理で説明責任を回避するのは許されません。妙なしがらみがなくても、特定の政治家のお金の流れをこうしたシステムで示すことができれば、もっと気軽に政治について語り合える風土が生まれるきっかけになるかもしれません。これは希望的観測ではありますが。
結論:透明化への一歩として
「政治とカネ」の問題は依然として日本の政治に影を落としています。政治資金の透明性を高め、国民への説明責任を果たすことは、民主主義の健全な機能に不可欠です。国による仕組み作りが進まない中で、民間が主導して生まれた政治資金検索サイトは、そのギャップを埋め、市民が政治に関心を持ち、チェックするための強力なツールとなり得ます。これは、政治の「可視化」に向けた重要な一歩と言えるでしょう。
出典
筆者:プチ鹿島(時事芸人)
参照:Newsweek Japan via Yahoo News、TBS系『news23』特集、東京新聞の調査報道