自民・維新の「新連立政権」は高市総理の戦略か?閣外協力に秘められた解散の思惑

自民党の高市早苗総裁と、日本維新の会の吉村洋文代表は10月20日、連立政権の合意文書に署名しました。これにより10月21日の国会では両党による新連立政権が樹立されることになりますが、その行方には早くも不穏な空気が漂っています。特に注目されるのは、維新が閣僚を出さない「閣外協力」という形式。これは高市政権の安定と、その先の解散総選挙を見据えた戦略的な布石なのか、今後の日本の政局に大きな影響を与えるこの連立の真意を探ります。

自民党の高市早苗総裁と日本維新の会の吉村洋文代表が連立合意文書に署名する会談風景自民党の高市早苗総裁と日本維新の会の吉村洋文代表が連立合意文書に署名する会談風景

連立合意の核心:政策と協力体制の詳細

両党が署名した連立合意文書には、今後の重要政策に関する具体的な方針が盛り込まれています。

食料品に限った消費減税ゼロ%については、2年間限定での実施も視野に入れ「法制化の検討を行う」とされました。また、首都機能を補完する「副首都構想」に関しては、「来年の通常国会で法案を成立させる」ことを目指すとしています。

一方で、両党間で隔たりが大きかった企業・団体献金の廃止については、高市総裁の任期である2027年までの実現を目指し、継続協議する方針です。さらに、維新が重視してきた衆議院議員定数の削減については、「1割を目標」とし、臨時国会で議員立法案を提出することで合意。しかし、議員定数削減は「民意の反映を阻害する」といった異論も多く、今後の議論は難航が予想されます。

維新は「閣僚なし」:安全策としての閣外協力

今回の連立合意で特筆すべきは、日本維新の会から閣僚を出さず、閣外協力にとどまる点です。具体的には、馬場伸幸元代表の盟友である遠藤敬国対委員長(57)が総理補佐官に起用されるのみとなる見通しです。

遠藤氏は維新で国会対策委員長を長く務め、与野党問わず幅広い人脈を持つことで知られています。連立協議においても「遠藤がいないと話にならない」(自民幹部)と評されるほど、自民党からの信頼が厚い人物です。ちなみに、若い頃から秋田犬のブリーダーとしても名をはせ、今も公益社団法人・秋田犬保存会の会長を務めています。

維新内部では複数の閣僚ポストを狙うとの憶測もありましたが、維新は所属議員の不祥事が少なくないと指摘されてきた経緯があります。もし大臣や政務三役を出せば、国会の予算委員会などで追及され、高市政権の「時限爆弾」となりかねないという懸念があり、安全策として閣外協力が選択されたとの見方もあります。

自民党内の複雑な反応:不満と本音

今回の連立合意に対し、自民党内からは複雑な反応が出ています。特に維新と激しく対峙してきた自民党大阪府連に所属する現職議員からは、「高市さんが総理になりたい気持ちはわかるが、維新と戦ってきた我々の立場はどうなるのか。地域支部の支部長を辞めることも考えている」と不満の声が漏れています。

その一方で、高市総裁と近しい自民党のベテラン議員からは「閣外協力で落ち着いて、本当によかった」という本音が聞かれました。

閣外協力の真の狙い:高市総理の解散戦略

このベテラン議員によれば、自民党と維新の限定的な関係である「閣外協力」にとどまったことで、今後、維新との連立を見直しやすくなる可能性があると指摘します。

「今回一番大事なのは、確実に首班指名選挙で勝ち、高市さんが総理になることです。当然ですが、総理になれば、解散権をとれます。まずは臨時国会で、ガソリン税など物価高対策で協力し、実績をつくったところで解散すればいい。目玉政策を打ち出した上で、支持率が高いうちに解散。それで自民党の議席を取り戻す以外に政権を安定させる方法はないでしょう。もちろん、維新との合意文書はあるわけですが、選挙後の連立の組み直しの可能性は、ゼロではない」

このコメントは、今回の新連立政権が、高市氏の総理就任と、その後の早期解散総選挙に向けた戦略的な一歩である可能性を示唆しています。物価高対策での国民の支持を得て、自民党の議席を回復させるための「一時的な協力関係」と捉えている側面があるようです。

結論

自民党と日本維新の会の連立合意は、表面上は政権安定への一歩と見えますが、「閣外協力」という形態や自民党内の本音からは、高市総裁の総理就任と早期の解散総選挙に向けた戦略的な思惑が強く感じられます。政策的な隔たりを抱えつつも、まずは政権を確立し、国民の支持を得て解散権を行使するというシナリオが描かれている可能性が高いでしょう。今後の政局の動向、特に物価高対策への取り組みと、それがいつ解散総選挙へと繋がるのか、注目が集まります。

参考文献