面接で「不適切」とされた服装が波紋:就活生と採用側のすれ違い

就職活動における面接の服装規定が、再び議論の的となっている。ある女性が自身の面接体験を動画で共有したところ、「その服装は不適切だ」として不採用になったという内容が多くの共感を呼び、インターネット上で広く拡散されている。この出来事は、採用現場における服装基準の曖昧さや主観性について、改めて問いを投げかけるものとなった。

アセルさん(heylady_12)は4月29日、TikTokに自身の面接時の服装写真を添えた動画を投稿し、「面接官に『その服装は面接には不適切だ』と言われたが、何が問題だったのか理解できない」と疑問を投げかけた。軽い気持ちで投稿されたこの動画は瞬く間に注目を集め、再生回数は290万回を超える反響を呼んだ。コメント欄には、特に多くの女性から「自分も似たような経験をした」といった共感の声が殺到した。

就職活動の面接で「不適切」と判断され波紋を呼んだ服装(イメージ画像)就職活動の面接で「不適切」と判断され波紋を呼んだ服装(イメージ画像)

アセルさんは2年前に夫と3人の子どもと共にキルギスから米国へ移住した。新しい国、新しい言語、そして新しい職場の文化に適応するために努力を重ねてきたという。米国でのキャリアはWalmartのレジ係から始まったが、母国では金融機関での勤務経験があり、再びその分野で働きたいと考えていた。しかし、道のりは平坦ではなかった。

彼女は本誌の取材に対し、「電話面接やビデオ面接で何度も不採用になった」と語っている。米国での職歴がないこと、そしてビジネス英語に自信が持てなかったことが理由として考えられた。そんな中で得た、念願の対面での面接の機会。しかし、面接官たちの態度は終始よそよそしく、彼女が話す内容にもほとんど目を向けなかったという。緊張から言葉に詰まり、伝えたいことも十分に表現できなかった。そして面接の最後に、「あなたの服装は面接にふさわしくない」と告げられた。

「私はその言葉を、批判ではなく助言として受け止めようとした。しかし、具体的に何がいけなかったのかが納得できなかったから、あの動画を撮ったのだ」とアセルさんは振り返る。動画がこれほどまでに反響を呼ぶとは予想していなかったが、コメント欄には多くの女性たちの体験談が寄せられ、図らずも「共感の場」が生まれた。「ヒールを履かなかったから」「髪を下ろしていたのがダメだったらしい」「コーポレートっぽく見えなかったと言われた」など、服装に関する様々な理由で不採用になった経験談が次々と寄せられた。

あるコメントでは、「私はカルバン・クラインのフラットシューズに黒のスーツで面接に行ったが、紹介者から『ヒールの方が良かったそうだ』と後から聞かされた」という具体例も明かされた。また、「ドイツでリクルーターをしているが、服装の話ばかりするような会社は避けるべきだ」という経験に基づいたアドバイスもあった。HR(人事)関係者からも、「たった一枚のジャンパーで不採用を決めるのは、時代遅れの採用文化の象徴だ」といった批判的な意見が投稿された。

アセルさん自身は、寄せられた意見について「私の服装がビジネスカジュアルとして適切だという人もいれば、もっとフォーマルにすべきだったという人もいた。これは皆が面接での不採用や、HRの曖昧で主観的な判断基準に疲れ果てている証拠だと思う。そういった現実に対する共通の疲労感や怒りがあるからこそ、私の動画が多くの人々の心に響いたのだろう」と分析している。

ソフトウェア企業Omnisendの採用スペシャリストであるラドヴィレ・シュリオゲリテ氏も、本誌のインタビューに応じている。彼女は、業界によって服装に対する期待値は確かに異なると認めつつも、「一枚のジャンパーで不採用とするような判断は、採用文化として見直されるべきだ」と強く指摘する。求職者に対しては、応募する職種よりもややフォーマルな服装を心がけ、派手なプリントや大きなロゴの入った服は避けるのが無難であるとアドバイスしている。

この一連の出来事は、就職活動における服装のあり方が、単なるマナーではなく、個人の多様性や企業の文化、さらには採用プロセスそのものの公平性に関わる問題であることを浮き彫りにしている。

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