【カイロ時事】米国務省のピゴット副報道官は26日の記者会見で、パレスチナ自治区ガザで住民への食料配給を担う「ガザ人道財団(GHF)」に対し、米政府が新たに3000万ドル(約43億円)を拠出すると明らかにした。米イスラエルが主導するGHFの活動は、中立性について国連などから厳しい批判を受けているものの、米国は支援を強化する姿勢を打ち出した形だ。これは、ガザにおける人道支援の複雑な現状を示す動きと言える。
米主導のGHF、設立背景と活動実態
ガザでは従来、国連機関や主要な非政府組織(NGO)が物資配給の中心を担ってきた。しかし、イスラエル政府はイスラム組織ハマスによる物資の横取りを懸念し、3月2日に境界を封鎖した。これを受け、米国とイスラエルが導入した新たな枠組みの下、GHFが5月下旬に活動を開始した経緯がある。米政府は、GHFがガザ住民への食料提供において重要な役割を果たしていると強調している。
米国による活動実績の強調と現場の現実
ピゴット副報道官は会見で、GHFがこれまでに4600万食分の食料を配給した実績を挙げ、「ハマスの横取りを防止しつつ今日まで活動を続けてきたことは、称賛され支持されるべきだ」と述べ、その有効性を主張した。
パレスチナ自治区ガザ中部でガザ人道財団(GHF)の食料配給を待つ人々
しかしながら、GHFの配給所付近では、食料を求めて殺到した住民らが犠牲となる事件が多発しており、これまでに約550人が死亡したとされる。ガザ当局は、これらの死傷者は警備に当たっていたイスラエル軍の発砲によるものだと主張している。AFP通信の報道によれば、26日にもイスラエル軍の攻撃により65人が死亡している。食料配給という人道支援の現場で、依然として高いリスクが伴う現実が浮き彫りになっている。
イスラエルの主張と広がる人道危機
イスラエルのネタニヤフ首相は25日の声明で、「ハマスが再び民間人から支援物資を盗み取っていることを示す情報がある」と発表し、軍に対して横取り防止のための計画策定を指示したと述べた。これは、イスラエル側がガザへの支援物資搬入を制限する理由の一つとして挙げている懸念を改めて表明したものだ。
一方、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は26日、封鎖開始後初めてトラック9台分の医療物資がガザ入りしたことを自身のSNSで明らかにした。これらの物資は近く病院に運び込まれる予定だという。しかし、テドロス氏は現状の支援規模について「大海の一滴にすぎない」と述べ、ガザで命を救うためには「大規模な援助が不可欠だ」と強く訴えた。
まとめ
米政府によるGHFへの追加拠出は、ガザへの人道支援を継続・強化する意図を示すものだが、支援実施を巡ってはGHFの中立性への批判、現場での住民の犠牲、そして物資横取りを巡る主張の対立など、依然として多くの課題が存在する。限られたルートからの物資搬入と、現場の危険な状況は、ガザにおける人道危機が深刻さを増している現状を示唆しており、より大規模かつ安全な支援の必要性が国際社会から強く求められている。