梅雨前線が停滞し、気圧変動と湿度の高さが続く6月は、心身の不調を感じやすい時期です。疲れやすくなったり、だるさを訴えたりする方が増えます。管理栄養士の視点から、この時期に起こりやすい疲れを「癒やす」ための食事について、注意すべき点をお伝えします。
梅雨時は日照時間が短くなることで気分が内向きになり、憂鬱感が増す方も多いでしょう。このような「心の不調」を感じると、つい陥りがちなNGな食習慣があります。それは、「ドーパミン」というホルモンを分泌させる特定の食事に、手が伸びてしまうことです。
ドーパミンは「快楽ホルモン」とも呼ばれ、楽しい経験や嬉しい経験をした時に、喜びや幸せを感じさせる脳内物質です。何かを食べて「おいしい」と感じた時にも放出されるため、一時的に気分が良くなります。
快楽を求める「嗜好品」に注意
ドーパミン放出を促しやすい食べ物の代表例として、お酒、コーヒー、甘い飲み物、チョコレートやケーキなどのスイーツといった嗜好品が挙げられます。ストレスを感じた時についつい口にしてしまうものや、一度食べ始めると止まらなくなるものが、これらに当たることが多いです。
ドーパミンを分泌させる食品には依存性が生じやすいという側面があります。これらの食品を頻繁に摂取していると、「また食べたい」「もっと飲みたい」と感じやすくなり、過剰摂取につながりかねません。適度に楽しむのは問題ありませんが、依存状態にならないよう注意が必要です。
梅雨時期の体調不良や疲労感をイメージした写真
糖質の過剰摂取が招く心身の不調
まずは、甘いものです。糖質を過剰に摂取すると、血糖値が急激に上昇し、インスリンが大量に分泌されます。その反動で血糖値が急降下するため、再び糖質を強く欲したり、血糖値の乱高下によってイライラや不安を感じやすくなったり、疲労感が増したりします。
甘い飲み物やお菓子に手が伸びやすい方は、代替案を検討しましょう。甘い飲み物は水やお茶に、甘いお菓子はナッツやチーズなど「甘くない」食品に変えることを意識してみてください。
ラーメンなど糖質を多く含む炭水化物を食べ過ぎてしまう方も、同様に「快楽を求める食べ物」として依存しやすい傾向があります。全粒粉パンを選んだり、野菜を先に食べたり、食事と一緒に食物繊維を多く摂るなど、血糖値の急上昇を抑える食べ方を意識することが大切です。
主食、主菜、副菜が揃った栄養バランスの良い食事を基本とし、特に旬の食材を取り入れることで、食後の満足感を得やすくなり、心身の調子を整えることにもつながります。自然と糖質への依存から抜け出しやすくなるでしょう。この時期には、アジ、カツオ、ホタルイカなどの魚介類や、きゅうり、トマト、ナス、ピーマンなどの夏野菜が出回ります。カツオのタタキやアジのマリネ、夏野菜を使ったラタトゥイユなど、季節の恵みを日々の食卓に取り入れてみましょう。
カフェイン依存とその代替策
コーヒーを一定時間飲まないと倦怠感が出たり、イライラしたりする方、あるいは1日に3杯以上飲まないと満足できないという方は、コーヒーに含まれるカフェインへの依存が疑われます。カフェインには脳内でドーパミンの働きを強める作用があり、一時的に集中力ややる気が高まったように感じさせます。しかし、この効果を繰り返し求めるうちに、コーヒー依存に陥るリスクがあるのです。
カフェインの過剰摂取は、頭痛や不眠、消化器系の不調など、さまざまな健康被害を引き起こす可能性が研究で報告されています。飲み過ぎには十分注意が必要です。
コーヒー依存の傾向がある方におすすめの飲み物としては、デカフェコーヒー、高い抗酸化作用を持つルイボスティー、リラックス効果が期待できるカモミールなどのハーブティーが挙げられます。これらはすべてカフェインレスです。また、暑い季節にはミネラルも補給できる麦茶も適しています。
急にコーヒーを完全に断つのではなく、まずは1日のうち何杯かをこれらの代替飲料に置き換え、最終的にコーヒーは1日3杯以内にとどめることを目標に意識していきましょう。コーヒーが飲みたくなったら、まず一杯の水を飲んで気持ちを落ち着かせるのも有効な方法の一つです。
梅雨時期の心身の疲れに対して、嗜好品に頼りすぎるのではなく、栄養バランスの取れた食事や健康的な飲み物を選ぶことが、体調管理には非常に重要です。旬の食材を取り入れながら、心と体が喜ぶような食事を心がけましょう。