SNS上で「なぜダサいシャツは絶滅しないのか」という議論が盛り上がりを見せています。確かに、2000年代のクールビズ導入期に登場したデザインシャツを、20年以上経った今も量販店やプライベートブランドで見かけることがあります。色付きボタンや異素材・柄のパーツで切り替えられたビジネスシャツは、当時イタリアファッションの影響もあり、「ノージャケットスタイルで下着に見えない工夫」として広まりましたが、シンプルさが重視される現代では、こうした過度な装飾はむしろ敬遠される傾向にあります。にもかかわらず、なぜ一部で定着し続けているのでしょうか。
飾り付きシャツが生まれた背景と変化
クールビズが始まった当初、ビジネスシーンでジャケットを脱ぐ習慣が根付く中で、ワイシャツ一枚のスタイルが「下着のように見える」という声がありました。これに対応するため、襟裏や袖口に色や柄を配したり、ボタンの色を変えたりといった装飾的なデザインが生まれました。これはイタリア的な着こなしのエッセンスを取り入れたものであり、当時のビジネスファッションにおいて一定の役割を果たしました。しかし、時間の経過とともに、ビジネスウェアのトレンドはよりシンプルで機能的な方向へと変化し、過剰な装飾はかえって野暮ったい、時代遅れな印象を与えるようになってきました。
なぜ装飾的なビジネスシャツは今も存在するのか
現代のファッション感覚からすると「余計な装飾」に見えるシャツが市場からなくならない背景には、いくつかの要因が考えられます。一つには、「ビジネスシャツの正解」が一般的に明確に言語化されていないため、消費者がデザインの良し悪しを判断する明確な基準を持ちにくいという側面があります。また、実用的な理由として、襟裏に色や柄があるタイプは、皮脂汚れが目立ちにくく、洗濯後のメンテナンスが楽という声も聞かれます。さらに、地方の量販店やプライベートブランドなどでは、店頭で消費者の目を引くために、あえて個性的(あるいは派手)なデザインのシャツを戦略的に展開している可能性も指摘されています。ビジネスシャツを「相手とのコミュニケーションツール」としてではなく、単なる「日用品」と捉える消費者にとっては、こうした機能性や目立ちやすさが選択の理由になることも理解できます。
装飾(色つきボタンや襟裏の切り替えなど)のあるビジネスシャツのクローズアップ画像。ビジネスシーンでの着用を検討する際の参考として。(ビジネスシャツ 選び方)
余計な装飾が与える可能性のある印象
ビジネスシーンにおいて、服装は非言語のコミュニケーションツールの一つです。無意味にカラフルなボタンや目立つステッチなど、過剰な装飾のあるシャツは、意図せず相手に特定の印象を与えてしまうリスクがあります。これは必ずしも「清潔感がない」と直結するわけではありませんが、「なぜこのデザインを選んだのだろう?」という余計な疑問を抱かせたり、場合によっては「TPOを理解していない」「自己主張が強すぎる」といったネガティブなメッセージとして受け取られたりする可能性も否定できません。特に、初対面の相手や自分より上の世代の方と会う際には、服装が与える第一印象は非常に重要です。20年前は「下着に見せない工夫」だったかもしれませんが、現代においては、その装飾がノイズとなり得ることへの意識が必要です。
令和時代のビジネスシャツ選びのポイント
現代のビジネスシーンにおいて、最も無難で好印象を与えやすいビジネスシャツは、シンプルで清潔感のあるデザインです。基本は白無地か淡いブルー無地、あるいは目立たない細かな柄(ストライプやチェックなど)がおすすめです。襟の形は、ネクタイを締めるならレギュラーカラーやワイドカラー、クールビズでノーネクタイならボタンダウンなどが定番です。ボタンの色は生地と同系色が基本で、襟裏や袖口の切り替えもない方がクリーンな印象を与えます。ビジネスシャツを選ぶ際は、日用品としての側面だけでなく、着用シーンや相手に与える印象を考慮することが、令和時代においてはより重要と言えるでしょう。