国分太一氏降板で日テレ会見 フジテレビの失敗から何を学んだか 広報専門家が分析

日本テレビは6月20日、TOKIOの国分太一氏にコンプライアンス上の問題行為が複数あったとして、人気番組「ザ!鉄腕!DASH!!」からの降板を発表し、緊急会見を開いた。タレントとテレビ局が関連する問題としては、年始に世間を騒がせた「中居・フジテレビ問題」が記憶に新しい。フジテレビは初動を誤り、スポンサーの大量撤退を招く事態となった。今回の日テレ会見は、フジの失敗を反面教師にできたのか?広報の専門家で元テレビ局員の下矢一良氏が今回の会見を分析する。

日本テレビはフジテレビの失敗から学んだか?

国分太一氏の問題行為と出演番組降板に関して日本テレビが行った会見は、一連のフジテレビ問題の教訓が生かされた対応だったと言える。フジテレビも、2023年に性加害問題で会見を行った旧ジャニーズ事務所も、問題をさらに大きくした要因の一つは、「初動でのメディア対応を決定的に間違えたこと」だった。

両社は日本で最もメディアを知り尽くしている会社と言える企業でありながら、そのメディア対応を誤った。その背景には、報道メディアを理解していなかったことがある。フジテレビの港浩一前社長が日頃接していたバラエティ部隊の世界と、報道メディアの世界は全く違う。経営陣がその本質的な違いを理解していなかったことが、フジテレビの初動対応の失敗につながった。

「報道シフト」の危機管理体制

対する日本テレビは、こうしたフジの失敗を踏まえ、「報道シフト」の危機管理体制を構築してきていると感じる。例えば、日本テレビおよび親会社の日本テレビホールディングスでは、6月27日付で役員の異動や担務変更が行われるが、執行役員の伊佐治健氏の担当領域は「報道、広報補佐」となっている。これまでは報道のみだったので、広報補佐が加わった形だ。

伊佐治氏は社会部、政治部などを経験し、「news zero」のチーフプロデューサーを務めた報道マン。加えて、広報部長を務める下川美奈氏は、元警視庁キャップで社会部長を経験しており、社会部記者の性質をよく理解しているはずだ。こうした体制を見ても、問題が生じたときに“報道で受けて立つ”シフトをつくろうとしているのがわかる。

情報統制の成功

私がもう一つ感心したのは、問題の公表までに日本テレビ社内や関係者から情報が漏れなかったことだ。5月末に事案を把握してから、約3週間かけて調査を行ったというが、その期間に週刊誌などのメディアでこの問題が報道されることはなかった。

「ザ!鉄腕!DASH!!」のような大型番組の場合、制作会社なども含めると関係者が100人ほどに上ることも珍しくない。局員だけでなく、制作会社やフリーランスのディレクター、放送作家なども含まれるはずなので情報統制は難しい。3週間もの調査期間があれば、どこかから情報が漏れてもおかしくないが、それがなかったのは特筆すべき点だ。

国分太一氏のコンプライアンス問題がスポーツ新聞各紙で報じられている様子国分太一氏のコンプライアンス問題がスポーツ新聞各紙で報じられている様子

「中身がなくても会見を開いた」理由

一方で、今回の会見では、国分氏にコンプライアンス上の問題があったとしつつ、その詳細については、プライバシー保護を理由に具体的な内容が明かされることはなかった。メディアやSNSでは「中身がない」とも評されている。

では、日本テレビが、そのように「何も話せない状態」であっても会見を開いた目的は何だったのか。端的に言えば、“アリバイ作りの会見”だったのではないか。会見を開くことで、「調査を実施し、公に発表する」というプロセスを踏んだことを内外に示すことができる。これにより、無対応による批判を避ける意図があったと考えられる。

結論

日本テレビの今回の対応は、過去のメディア対応の失敗事例、特にフジテレビの教訓を活かしたものだったと言える。報道経験豊富な人材を危機管理・広報体制に配し、情報漏洩を防ぐなど、初動対応においては一定の成功を収めた。一方で、詳細を明かせない状況下での会見は「中身がない」との批判も招いたが、これは「対応した」というアリバイ作りとしての側面が強いと考えられる。全体として、過去の教訓を踏まえ、より「報道」を意識した危機管理の進化が見られる対応だったと評価できる。

Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/2c13b5caf159cd6a9269ccdfd5b6513d16892758