財政に関して、意図的に流布されている「5つのうそ」を暴こう。意図的に財政破綻させようとしている論者もあるかもしれないが、哀れなことに、多くのうそは、ただ無責任に政治家や人々を喜ばせようとしてつくられているか、自分でその誤りに気付かずに主張しているか、どちらかである。
■真実かうそか、「有力な見分け方」とは?
こういう論者は、基本的に「寂しがり屋のかまってちゃん」だから、数多くの賛同を得るために、SNSを中心に、単純な暴論を展開している。だから、うそかどうかの見分け方の1つは、SNSでよく聞く議論かどうか、観察してみることである。
これまで、こういったうそに対しては、誠実な人々はまじめに取り合ってこなかったが、事ここに及んでは、今さらではあるが、まず、善良な市民が信じてしまわないように、はっきりうそだと論破することが必要である。さっそくとりかかろう。
【うそ1】 政府の借金は国の借金ではない。一方で、それは国民の資産であるから、何の心配もない。
負債は誰かの債権であるから、負債と資産はバランスして、同額となるはずである。それこそが、バランスシートである。国の借金というのは、対外債務という考え方もできるから、そういう意味では、国の借金ではない、ともいえる。
しかし、個々の企業が倒産することを考えると、この議論はまったく意味がないことがわかる。企業Aの借金は銀行Bの債権つまり、資産であるから、企業Aは倒産しない、と言ったら、誰もがおかしいことに気付くだろう。
企業Aが借金を返せないのでは? と思ったら、誰も、企業Aの借金の借り換えに応じないだろう。となれば、企業Aは倒産し、銀行Bは資本が毀損する。1990年代後半の日本経済である。銀行Bは窮地に陥る。同様に、満期が来た国債の借り換えに誰も応じなくなったら、国債を資産として保有している者は破綻するつまり、この【うそ1】の後半がいちばんの問題である。180度逆である。国民の資産であるからこそ、とてつもなく心配なのである。