9割近い自治体が待機児童ゼロである一方、いまだSNS上には保育園落選を嘆く投稿が多くみられる。その背景の一つに、隠れ待機児童の存在がある。
【写真を見る】待機児童ゼロの影に「隠れ待機児童」 背景に無理する保護者 有職者の約半数が、子どもの誕生後にプランの変更や喪失を経験
国の待機児童の定義では、除外4類型と呼ばれる「(1)育児休業中の者」「(2)特定の保育園等のみ希望している者」「(3)地方単独事業を利用している者」「(4)求職活動を休止している者」は、待機児童にカウントされない。
ここに該当する児童は「隠れ待機児童」と呼ばれ、その数は2024年は71,032人で近年高止まりしている。
一般的に、自宅から徒歩20〜30分未満で通える保育園に空きがある場合は、「(2)特定の保育園を希望している」とみなされる。
一方、毎日の通園の負担は重く、通いやすい保育園を選ぶことは、仕事と育児の両立や業務パフォーマンス向上に直結する。
負担感は希望した子どもの数をあきらめる要因にもなりうる。
「(4)求職活動を休止している者」とは、入園を申し込んだが求職活動を継続しておらず「保育の必要性」が認められない者を指す。
しかし、保育園に預けられる見込みがないなかで求職活動を続けるのは困難である。
待機児童ゼロでも、保育のニーズは満たされていない。
隠れ待機児童の実態に基づいた保育政策を一層推進すべきである。
たとえば、企業によるリモートワークの徹底や男女が交代で育児休業を取得する仕組みの推進が重要だ。
後者は、キャリアブランクの短縮と同時に、保育士不足の軽減が期待される。
自治体はAIやデータを用いた保育の質の向上や利用調整の効率化が求められる。
待機児童ゼロは、保護者の「無理」で成り立っている面がある。保護者の送迎の負担やキャリア断絶、就労・昇進意欲の低下など、保育に起因した課題が残っている。
保育は未来の人材を育てる場であるとともに、現役世代の就労や生産性向上に直結する場である。
両立しやすい社会は、子を持つことを前向きに考えられ、人口減少対策にもなる。