オンラインカジノの危険な真実:「グレーゾーン」は存在しない、相次ぐ著名人逮捕が示す違法性

近年、日本の著名人がオンラインカジノ(オンカジ)の利用に関与し、逮捕や書類送検される事例が相次いでいる。これにより、これまで一部で「グレーゾーン」と見なされてきたオンラインカジノの違法性が改めて浮き彫りとなっている。フジテレビのプロデューサーやアナウンサー、お笑い芸人、プロ野球選手など、様々な分野の顔ぶれが摘発対象となっている状況は、オンラインカジノが社会の幅広い層に浸透し、看過できない問題となっている現状を示唆している。警視庁の発表によれば、オンライン賭博に関連する検挙数は年々増加しており、2024年には既に279人に達し、2022年の59人から比較すると4倍以上にも激増している。多くの利用者は「違法ではない」「グレーだと思った」と供述しているようだが、法的な観点から見れば、日本国内からのオンラインカジノ利用は明確な違法行為であり、「グレーゾーン」は存在しない。

オンラインカジノは明確な「違法」行為

一部でオンラインカジノが「グレーゾーン」だと考えられる根拠としては、「賭博行為が行われるサイトのサーバーが海外にあるため、日本の法律は適用されない」「賭博罪は賭ける側と胴元側の双方が罰せられて初めて成立する『必要的共犯』であり、海外で合法な胴元は日本の罪に問えないため、賭けた側も罰せられない」といった説が挙げられてきた。しかし、これは誤りである。2024年に警察政策学会が公表した見解では、「日本国内において明確な違法行為である」と断言されている。日本の刑法第185条(単純賭博罪)および第186条第1項(常習賭博罪)は、日本国内での賭博行為を罰するものであり、オンラインであっても日本国内からアクセスして賭博を行った時点で罪が成立しうる。海外のサーバーを利用していようと、相手が海外事業者であろうと、日本国内での行為として日本の法律が適用されるのである。

著名人起用と巧妙なマーケティング:オンカジが広まった背景

オンラインカジノが日本で広まった背景には、様々な要因がある。2012年頃には既に日本語対応サイトが登場しており、アフィリエイトブロガーが積極的に紹介していた時期がある。多くの紹介サイトは、会員がゲームで遊ぶ限り報酬が発生するという形態をとっており、強力な集客ツールとなった。しかし、最大の転換点となったのは、新型コロナウイルスのパンデミック時期だ。海外のオンラインカジノ運営企業は、集客のため日本の著名人やインフルエンサーを広告塔として大々的に起用した。元大関の把瑠都氏、元プロサッカー選手の吉田麻也氏、元セクシー女優の上原亜衣氏らが宣伝に関わったことは広く知られている。海外で有名人がカジノの宣伝を行うことは珍しくないが、これらの著名人が関わったことで、「この人が宣伝しているなら大丈夫だろう」と利用者の危機感を薄れさせてしまった側面は否定できない。また、複数のテレビ局やラジオ局で、海外オンカジサイトの「無料版」CMが流れていたことも、「グレー」という誤解が広まる一因となった。さらに、入金額に応じたキャッシュバックや、賭けに使えるポイント付与などの手厚いボーナスが、利用者の増加に拍車をかけた。その結果、2021年には月間アクセス数が1000万を超える大手サイトが複数現れ、日本からのアクセス数は世界第3位にまでなった。

スマートフォンでオンラインカジノをプレイする人々のイメージ(違法性を認識せずに利用する実態)スマートフォンでオンラインカジノをプレイする人々のイメージ(違法性を認識せずに利用する実態)

深刻化する社会問題:依存症、借金、そして後手に回った国の対応

オンラインカジノの普及は、ギャンブル依存症や借金問題といった深刻な社会問題を引き起こしている。多額の借金を抱え、「闇バイト」に手を出してしまうケースも報告されている。これだけ問題が顕在化するまで、日本の摘発例は少なかったことも、「グレー」説を後押ししたと言われている。実際、日本政府は2013年の時点で、「一般論としては、賭博行為の一部が日本国内において行われた場合、賭博罪が成立することがある」という公式見解を出していたにもかかわらず、具体的な対応は完全に後手に回った。警察と消費者庁が共同で「オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!」という認知普及キャンペーンを初めて行ったのは、2022年になってからのことだった。

「いつでもどこでも」の落とし穴:ユーザーが語る依存のメカニズム

過去にオンラインカジノを利用していたという20代の男性は、パチスロや他のギャンブルと異なり、時間や場所を選ばずにプレイできる点に魅力を感じていたと語る。電車での移動中や昼休みといった隙間時間に手軽にポーカーなどができる感覚は、忙しい現代人にとって誘惑となりうる。また、「小額からお金を稼げる」「運が良ければ一生遊んで暮らせるような大金を得られる」といった「夢」も、のめり込む要因となる。この男性の場合、クレジットカードを使って場所を問わず簡単に入金できてしまうシステムが、依存に拍車をかけたという。「ポイントがなくなってもすぐに補充できるので、『もう一回だけ』と繰り返すうちに止められなくなるんです。おかげでいくら使ったかわかりません」と話し、現在はハマったことを後悔している。スマートフォンさえあれば、まるでゲームアプリのような感覚で簡単にアクセスできるオンラインカジノは、通常のギャンブルよりもはるかに速いスピード感で勝負が進み、24時間続けられることから、短期間でギャンブル依存症に陥ったり、「一生遊んで暮らす」どころか「一生かかっても払いきれない」ほどの借金を背負うリスクが極めて高いのである。