猛暑、欧州・米国を襲う:各地で対策強化、インフラ被害も

世界各地で記録的な猛暑が発生し、各国が対策に追われている。特に南欧や米国で気温が急上昇しており、日常生活やインフラに深刻な影響が出始めている。この異常な暑さは、地球温暖化との関連も指摘されており、一時的な現象ではないとの見方も強まっている。

イタリアやスペインといった南欧では、最高気温が42度に達する地域も現れている。これを受け、各国は熱中症予防のための措置を講じている。イタリアのシチリア島では、最高気温が39度まで上昇すると予測された日中の屋外労働が禁止された。イタリア北西部のリグーリア州でも同様の措置が発表されており、イタリア労働組合は全国への拡大を求めている。ローマ、ミラノ、ヴェネツィアなど一部の主要都市では、午前11時から午後6時の間は屋内に留まるよう住民に勧告が出されている。フランスの第2都市マルセイユでは、最高気温が40度に達したことを受け、公共プールが市民に無料で開放された。スペイン気象庁は最高気温が42度に達する可能性があるとして猛暑警報を発令し、夜間も猛暑が続く可能性があるため、高齢者や慢性疾患を持つ人々に注意を呼びかけている。

イタリア・ローマのトレヴィの泉で猛暑をしのぐ観光客の様子。欧州を襲う記録的な暑さを示す光景。イタリア・ローマのトレヴィの泉で猛暑をしのぐ観光客の様子。欧州を襲う記録的な暑さを示す光景。

猛暑は山火事のリスクも高めている。ギリシャの首都アテネ周辺では、気温が40度に上昇する中で大規模な山火事が発生し、当局は近隣地域に避難命令を出したほか、観光地であるポセイドン神殿に向かう海岸道路の一部を閉鎖した。ポルトガルのリスボンでは29日に最高気温が42度に達すると予想されており、国土の3分の2に猛暑と山火事の危険警報が発令されている。ユーロニュースは、高温かつ低湿度の状況が山火事の危険性を増大させ、このような状況が今後数日、数週間にわたって続くだろうと報じている。スイスでは、先月、スイスのビルヒ氷河の一部が崩落し、近隣の村の90%が埋没する事態が発生した。スイスでは近年、夏の暑さと冬の少雪による干ばつにより、氷河の融解速度が加速している。AP通信は、スイスの氷河に多数の穴が開いた様子を「まるでチーズのようだ」と伝えている。

大西洋を越えた米国でも、記録的な猛暑に見舞われている。米国立気象局(NWS)によると、今月24日にはニュージャージー州ニューアークで気温39.4度を記録した。ニューヨークでも気温は37度まで上昇したが、体感気温は40度を超えた。NWSは、米国中西部から東部海岸地域にかけて深刻な暑さが続いており、米国人1億6100万人が影響を受けているとし、大都市圏では体感気温が43.3度に達していると発表した。

猛暑による事故も各地で報告されている。ニューヨークのブロンクスでは、エアコンの使用急増により電力需要が高まり、3万4000世帯が停電に見舞われた。また、ニューヨーク市内ではアスファルトが溶解し、車が道路を突き抜けて落下する事故も発生している。

専門家は、今回の猛暑が一時的な現象ではない可能性が高いと指摘している。欧州連合(EU)の気候変動監視機関であるコペルニクス気候変動サービス(C3S)によると、今年3月は欧州史上最も暑い3月だった。地球温暖化の進行により、猛暑、洪水、干ばつといった極端な気象現象がより頻繁に発生しているとの見解が示されている。ガーディアン紙は、化石燃料の使用により大気が太陽光を遮断することで地球が熱くなっていることに加え、「ヒートドーム」現象が重なり、猛暑に苦しむ国が増えていると解説している。ヒートドームとは、高気圧が暖かい空気を地表付近に閉じ込め、特定の地域の気温を上昇させる現象を指す。C3Sによると、昨年は気候観測史上最も暑い年であり、世界全体で3000億ドル(約43兆3000億円)もの人的・物的被害が発生した。

今回の欧州や米国を襲う猛暑は、単なる異常気象ではなく、地球温暖化がもたらす深刻な影響の一端を示している。各国で対策が講じられているものの、その頻度と強度が増している極端な気象現象に対し、抜本的な対策が喫緊の課題となっている。

【参考文献】
ガーディアン紙 (The Guardian)
新華社通信 (Xinhua News Agency)
AP通信 (Associated Press)
米国立気象局 (National Weather Service)
コペルニクス気候変動サービス (Copernicus Climate Change Service)
ユーロニュース (Euro News)