米国が貿易不均衡の解消を目指し、主要な圧力をかける対象は韓国、日本、そして欧州連合(EU)です。これらの国々は対米主力輸出品目が重なるため、米国との貿易交渉の結果はそれぞれの経済に大きな影響を与えます。特に韓国にとって、競合国である日本やEUと同水準の交渉結果を得られるかどうかが、対米交渉の成否を判断する重要な基準となります。これまでの情報に基づくと、韓米交渉では関税面で日EUと同水準に落ち着き、同条件での競争が可能になりました。最大の焦点であった対米投資規模も、対米貿易黒字の規模を考慮すれば、他国と比べて著しい差はありません。しかし、韓国が韓米自由貿易協定(FTA)を通じて13年間享受してきた比較優位を失った点は、韓国にとって大きな痛手となっています。さらに、今後の韓米首脳会談でどのような追加要求が飛び出すか、不透明な要素も残されています。
トランプ米大統領と韓国交渉団のホワイトハウスでの貿易交渉合意後の記念撮影
「関税15%」が新常態に:韓米FTAの優位性喪失
関税率の面では、韓国は日本やEUと同様に、相互関税および自動車関税の両方で15%という結果を受け入れました。米国は貿易黒字国である英国とはいち早く合意し、相互関税を10%に引き下げましたが、それ以降は最低15%の関税率を堅持しています。
この交渉結果は、韓国が米国との間でFTAを締結しているにもかかわらず、その協定に相応しい優遇措置を受けられなかったことを意味します。例えば、韓米FTAのもとでは、韓国製自動車に対する関税はゼロでした。一方、米国とFTAを結んでいない日本や欧州の自動車は、これまで2.5%の基本関税を支払っていました。このわずかな関税差は、米国市場において韓国車が「コストパフォーマンス」を訴求する上での重要な強みとなっていました。しかし、トランプ前大統領はFTAの有無にかかわらず、韓国、日本、欧州の自動車全てに一律15%の関税を課しました。相互関税もこれまでの税率に関係なく15%で統一されたことで、韓国はFTA締結による全てのメリットを失うこととなりました。
韓国産業通商資源部の呂翰九(ヨ・ハング)通商交渉本部長は、この状況について、「日本が自動車関税を15%で合意すると、米国の自動車業界はこれに強く反発した。韓国も日本と同水準の関税(基本関税を除く12.5%)を要求したが、それに固執しすぎると、米国内の抗議が激しくなり、結果として15%さえも得られなくなる可能性があると判断した」と述べており、交渉における現実的な判断が伺えます。
各国の対米投資規模とその評価
米国が韓国と日本に共通して要求した対米投資基金の規模は、韓国が3500億ドル、日本が5500億ドルとされました。韓国の場合、このうち1500億ドルは造船分野に、残りの2000億ドルは半導体などの先端産業分野に投資される計画です。一方、EUは企業主導で6000億ドル規模の新規投資を行うことで合意に至りました。
昨年の国内総生産(GDP)に占める対米投資基金の割合を見ると、日本(14%)よりも韓国(19%)の方が高くなっています。しかし、米国が当初、韓国に対して4000億ドル規模の投資を要求していた点を考慮すると、最終的な合意額は「過度ではない」と評価する向きもあります。これは、韓国が交渉を通じて要求額を減額させることに一定の成功を収めたことを示唆しています。各国が貿易不均衡解消の一環として、米国内での雇用創出や産業育成に貢献する形で投資を約束した形です。
結論
今回の米国との貿易交渉において、韓国は関税面では日本やEUと同水準に収まり、競争条件は対等となりました。これは一見すると悪くない結果に見えますが、韓米自由貿易協定によって長年享受してきた自動車関税ゼロなどの比較優位性を失ったことは、韓国経済にとって大きな打撃となります。特に、韓国車が米国市場で培ってきた「コストパフォーマンス」という強みが薄れる可能性があります。
対米投資額に関しては、韓国は3500億ドルという巨額の投資を約束しましたが、これは当初の要求額よりは抑えられた形です。日本の5500億ドル、EUの6000億ドルと比較しても、その国の経済規模や対米貿易黒字を考慮すれば、不当に高い水準ではないという評価もあります。しかし、今後、韓米首脳会談で米国側から追加の要求がなされる可能性も残されており、韓国を取り巻く貿易環境は依然として不確実性を抱えています。国際的な貿易交渉は常に変化しており、各国は自国の利益を守るために戦略的な対応が求められています。