日韓国交正常化60年:共に民主党尹昊重氏、未来志向の協力強化を展望

日韓国交正常化から60年の節目を迎え、韓国与党「共に民主党」の知日派重鎮である尹昊重(ユン・ホジュン)国会議員が28日までに時事通信のインタビューに応じた。尹氏は、日韓両国が過去の浮き沈みを乗り越え、未来志向の協力関係をさらに強化する必要性を強調。特に経済連携においては、米国の高関税政策なども踏まえ、相互の国益に資する形での協力拡大に期待を示した。尹氏は韓日議員連盟の前幹事長を務め、革新系「共に民主党」で要職を歴任してきた。

日韓国交正常化60年について時事通信のインタビューに応じる韓国与党「共に民主党」の尹昊重国会議員(ソウル)日韓国交正常化60年について時事通信のインタビューに応じる韓国与党「共に民主党」の尹昊重国会議員(ソウル)

60年の関係性の評価と協力の必要性

尹氏は、過去60年の日韓関係について、浮き沈みを繰り返しながらも絶えず発展してきたと評価。特に1998年の日韓共同宣言以降、両国民間の交流や協力が飛躍的に広がった点を挙げた。現在では、外交や安全保障といった分野だけでなく、経済、文化などあらゆる分野において、日韓が協力しなければ相互に不利益を被る時代になったとの認識を示し、協力強化の重要性を改めて訴えた。

首脳会談の意義と未来志向

先日、先進7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせて行われた李在明(イ・ジェミョン)大統領と石破茂首相の初めての会談について、尹氏は大きな意味があると語った。両首脳が膝を突き合わせ、歴史問題を適切に管理しつつ未来志向で協力していくという立場を共有したことは、今後の関係構築の重要な一歩となると評価。互いを尊重し、慎むべき点は慎みながら、双方の国益に役立つ方向で共に努力すれば、関係は必ずうまくいくとの見方を示した。

具体的な協力分野への展望

具体的な協力策として、中東情勢や米国の高関税政策に関する情報交換の必要性を挙げた。さらに、人工知能(AI)やバイオ、文化コンテンツといった先端技術や産業分野での協力の可能性を強調。経済連携の強化策として、「包括的および先進的環太平洋経済連携協定」(CPTPP)への韓国の加入を日本が認めることが、両国関係の発展に資するとの期待を表明した。

李在明氏の外交姿勢と金大中氏との共通点

李在明氏の対日外交については、「価値より実利を重視する」と述べた。イデオロギー的な争いや論争に固執するのではなく、互いの利益になる現実的な関係を目指すのが李氏の外交哲学であると説明。尹氏は、自身が20代の頃から仕えた金大中(キム・デジュン)元大統領も、韓日間の問題を未来志向で賢く解決しようとした点で李氏とよく似ていると指摘した。石破首相も極端な政治思想を持たない人物像であることから、金大中氏と小渕恵三首相(当時)が発表した日韓共同宣言のような、新たな一里塚となる外交成果が生まれる可能性があると期待を寄せた。

議員外交の重要性と次世代への課題

長年、韓日議員連盟で活動してきた経験から、尹氏は議員外交が果たす役割の重要性を強調した。政府間の関係が悪化した局面においても、両国の議員が頻繁に会合を持ち、関係悪化を食い止めようと努力してきたことは、今後も重要な土台となり得ると述べた。一方で、近年、韓国の知日派議員や日本の知韓派議員が減少傾向にあることへの懸念を示し、次世代の政治家の交流に一層力を入れるべきだと提言した。

尹昊重氏略歴:1963年3月、韓国・ソウル近郊の京畿道加平郡生まれ。ソウル大哲学科卒。軍事政権下で学生運動に参加し投獄されたが、民主化後に赦免。金大中大統領(当時)の下で大統領府民情・政策企画秘書室行政官。2004年、国会議員に初当選し、現在5期目。革新系「共に民主党」の院内代表や党トップの共同非常対策委員長、韓日議員連盟幹事長などを歴任。62歳。

結論:未来志向と実利重視の協力強化へ

尹昊重氏は、日韓国交正常化60年を機に、両国関係が過去の課題を乗り越え、経済、技術、文化など多様な分野で実利を重視した未来志向の協力へと進む可能性を強調した。李在明氏の現実的な外交姿勢と石破首相との間の新たな関係構築への期待、そして議員外交や次世代交流の重要性を指摘する尹氏の言葉は、日韓関係が新たな段階に進むための示唆に富んでいる。今後、両国が共有する課題に対し、いかに具体的かつ建設的な協力体制を築けるかが問われる。