民間シンクタンクの都道府県魅力度ランキングで7年連続最下位の茨城県が全国に誇る「隠れたベストセラー」がある。自治体の外郭団体などが発行している「県民手帳」だ。今年版の発行部数は全国3位の4万1千部で、人口比では2倍以上の埼玉県(3万8000部)や千葉県(3万3500部)をしのぐ部数だ。その人気の理由とは-。
県民手帳は、各県の統計協会などが発行しており、東京、大阪、京都、北海道、兵庫、神奈川を除く41県で刊行されている。
茨城県では昭和31年版から発行が始まった。当初の発行部数は8000部だったが、主な利用者として想定していた統計調査員や行政関係者以外にも徐々に広まり、広く県民に親しまれる存在になった。現在販売中の令和2年版の発行部数は、6万5000部の長野、4万1000部の群馬に次ぐ4万部で、引き続き全国3位の座を維持した。
茨城県民手帳が支持される理由は何か。
県統計協会の担当者は「千葉県や埼玉県は人口の絶対数は多いが、首都圏に軸足を置く『千葉都民』や『埼玉都民』も多い。住んでいる県への関心が低いのではないか」とみる。
リピーターが多いことも特徴のようだ。
同協会の購入者アンケートによると、回答者のうち56%が「6回以上購入したことがある」と答えた。回答者の約70%は60歳以上が占められており、長年愛用し続けているファンの姿が浮かぶ。
「ずっと日記をつけているので、手帳の様式を変えないでほしい」
リピーターからは毎年多くの応援が県に届く。標準判500円、デスク判1000円という手頃な価格も人気で「今後もずっとこの値段で販売してほしい」という声も寄せられている。
もっとも、2年版の発行部数全国1位の長野県の人口は、茨城県の約287万人に対し約206万人だ。人口数を勘案するとその人気ぶりは茨城以上に際立つ。
長野県統計協会によると、販売店舗数が約1300店舗(茨城県は約400店舗)に達し県民が手帳を目にする機会が多いことや、こまめに表紙の色などの改良を重ねていることなどが人気の理由という。
茨城の隠れたベストセラーが発行部数全国首位に立つ日は来るか。
(永井大輔)
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県民手帳 各県の統計協会などが発行する手帳で、県内の市町村役場の所在地や連絡先、県の人口推移といった記録が記載されている。もともとは国勢調査を行う統計調査員向けに配布されていたが、のちに一般にも販売されるようになった。