<ひふみんEYE>
藤井聡太棋聖(竜王・名人・王位・王座・棋王・王将=22)が6連覇を達成した。30日に千葉県木更津市「竜宮城スパホテル三日月」で午前9時から行われた将棋のヒューリック杯第96期棋聖戦5番勝負第3局で、午後6時30分、84手でタイトル戦初登場の杉本和陽(かずお)六段(33)を下した。これでシリーズ3連勝として棋聖を防衛、7冠を堅持するとともに、タイトル獲得通算30期とした。
【写真】杉本和陽六段に3連勝して6連覇を達成した藤井聡太棋聖
本紙「ひふみんEYE」でおなじみ、加藤一二三・九段(85)が対局を振り返ります。
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プロ野球の名監督だった野村克也さんではありませんが、「勝ちに不思議な勝ちあり」という将棋でした。第4局(静岡県沼津市)まで見られると思っていましたから。熱海まで行きながら戻された感じですよ。
藤井棋聖はよく逆転勝ちしたと思います。ゆっくり指しすぎて、慌ててペースを上げた感じでした。並みの棋士なら確実に崩れてしまったでしょう。崩れずに指せるのがタイトル獲得通算30期たるゆえんです。結果を出したのが素晴らしい。王位戦も期待しましょう。
杉本六段は、藤井陣の飛車の横利きを止めるために5筋に打った歩が「芸のない緩手」でした。あの局面では2筋、4筋、1筋と歩を突いて上からつぶせば、必勝形のはずでした。将棋の業界用語なら、「この将棋で負けたら、勝てる将棋はない」ということ。初登場のタイトル戦で、またとない初勝利のチャンスを逃しました。(加藤一二三・九段)