参政党、異例の快進撃:ホストから専門家が警鐘を鳴らす「熱狂の背景」

SNSを積極的に利用しない層にとって、今回の出来事はまるで怪談のように映ったかもしれない。2025年7月20日に投開票を迎えた参院選で、破竹の勢いで支持を拡大した参政党は、「日本人ファースト」を掲げ、過激な発言で注目を集めた。彼らに熱狂した人々の、この異常とも言える夏の光景は、現代社会における政治参加の新たな側面を浮き彫りにしている。

歌舞伎町ホストたちの「参政党支持」:その背景とは?

今回の参院選では、参政党に意外な応援団が現れた。それは、東京・新宿歌舞伎町のホストたちである。ある有名ホストのグループがSNS上で「参政党支持」を公言したことは、大きな話題を呼んだ。神谷宗幣代表自身も街頭演説でこのことに満足げに触れ、党への支持を歓迎する姿勢を見せた。しかし、参政党を支持するホストが「投票済証明書が初回無料引換券に」とSNSに投稿した際には、参政党のさや氏はすぐに「感謝でいっぱいです!!」と反応したが、公職選挙法に抵触する恐れがあるとして、すぐに謝罪に追い込まれた一件もあった。

歌舞伎町に詳しいライターの佐々木チワワ氏によると、ホストたちの政治参加の背景には、長年の政治不信が共通して存在するという。特に、コロナ禍で夜の街の封鎖を主導した自民党と、風営法改正を推進した立憲民主党に対する深い失望感が、彼らを新たな政治勢力へと向かわせた一因だと指摘されている。「神谷さんの動画を見て、熱量が心に響いた!」と語るホストもいれば、「周りが参政党推しだから、自分も」という同調圧力から支持する者も少なくない。また、神谷代表や候補者が自身のSNS投稿に反応してくれたことで、承認欲求が満たされたことも、彼らを熱狂させた要因の一つだと分析されている。

参政党代表の神谷宗幣氏が演説中に支持者を見つめる様子参政党代表の神谷宗幣氏が演説中に支持者を見つめる様子

投票率上昇の裏に潜む「認知バイアス」の罠

SNSを通じて突如として政治に関心を持ち、投票所に足を運んだ層が増加した結果、今回の参院選の投票率は58.51%に達し、参院選としては15年ぶりに50%台後半という高い数字を記録した。しかし、この投票率の上昇は、本当に喜ばしいことなのだろうか。『みんな政治でバカになる』の著者である文筆家の綿野恵太氏は、この状況に警鐘を鳴らす。「一般的に、お金の知識がない人が安易な投資話に乗って失敗するように、政治の知識が乏しい人が投票すれば、失敗を招くのは当然ではないでしょうか」と綿野氏は指摘する。

人間には無意識の思考の偏り、すなわち「認知バイアス」が存在し、これは知能の高低にかかわらず誰もが持ち合わせている特性である。特に強固なのは「内集団バイアス」であり、これは自分と仲間だと認識した集団を優先する傾向で、政治的にはナショナリズムとして現れることが多い。内集団バイアスの影響を受けた政治ファンは、まるでサッカーのフーリガンや狂信的な野球ファンのようなものであり、都合の良い情報ばかりを集め、都合の悪い情報には耳を傾けなくなる傾向がある。このような状況に陥ると、「陰謀論はおかしい」と指摘しても、その声はほとんど届かないという。

今回の参政党の躍進と、それに伴う投票率の上昇は、情報化社会における「政治参加」の質について深く考える機会を与えている。感情や同調圧力、そして特定のバイアスに囚われた情報収集が、有権者の判断に大きな影響を与え得る現代において、一人ひとりが批判的思考を持ち、多角的な視点から情報を精査する能力がこれまで以上に求められている。

参考文献