トランプ氏、歳出法案批判のマスク氏に国外追放検討を示唆 対立激化

ドナルド・トランプ前米大統領は1日、自身の看板政策である歳出法案「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル」を批判した実業家イーロン・マスク氏に対し、同氏の国外追放を検討する可能性に言及した。この発言は、両者の間に歳出法案を巡る激しい対立があることを浮き彫りにしている。

トランプ氏からの具体的な脅威

ホワイトハウスで記者団に対し、マスク氏の国外追放を検討するかと問われたトランプ氏は、「分からない。検討する必要があるだろう」と回答。さらに、マスク氏が今年5月末まで率いていた政府効率化省(DOGE)をマスク氏自身に「ぶつける」可能性にも言及した。トランプ氏は、「DOGEが何だかわかるか? DOGEは、イーロンを裏切り、食べてしまうかもしれない怪物だ」と述べ、新たな政府機関がマスク氏率いるテスラやスペースXへの政府補助金に焦点を当てる可能性を示唆した。

歳出法案を巡り対立が深まるドナルド・トランプ前米大統領(左)と実業家イーロン・マスク氏歳出法案を巡り対立が深まるドナルド・トランプ前米大統領(左)と実業家イーロン・マスク氏

対立の背景とマスク氏の反論

トランプ氏は、マスク氏が歳出法案を攻撃しているのは、同法案から電気自動車(EV)支援策が削除されたことに不満を持っているためだと考えているようだ。トランプ氏は「彼はEV義務化を失いつつあり、大いに動揺しているが、今言えるのは、彼がもっと多くのものを失う可能性があるということだ。イーロンはもっと多くのものを失う可能性がある」と脅迫的な発言をした。

前日の6月30日夜には、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」でも同様のコメントを投稿。「補助金がなければ、イーロンはおそらく事業をたたんで、南アフリカに帰らざるを得なくなるだろう」と、マスク氏の出身国に触れて批判を続けた。

世界有数の富豪であるマスク氏は、かつて2024年大統領選におけるトランプ氏の主要な献金者であり、当初はトランプ氏に非常に近しい存在だった。しかし、両者は歳出法案を巡って意見が対立。マスク氏はここ数日間、共和党が米国をEVやクリーンエネルギー革命の最前線に立たせる努力を放棄したと非難し、批判を再燃させている。さらに、マスク氏は同法案が可決された場合、「アメリカ党」という新党を結成する必要があると改めて主張している。

まとめ

ドナルド・トランプ前大統領とイーロン・マスク氏の間の対立は、歳出法案を巡り新たな局面を迎えている。トランプ氏が国外追放や新設機関「DOGE」による補助金停止の可能性を示唆したことは、単なる口論を超えた、両氏の関係における重大な亀裂を浮き彫りにしている。マスク氏の反論や新党結成への呼びかけは、この対立が今後の米国の政治・経済情勢に影響を与える可能性を示唆しており、その動向が注目される。

出典

  • AFPBB News