2025年6月13日、イスラエル軍によるイランへの大規模な空爆が開始されました。この攻撃は100ヵ所以上もの核関連施設や軍事拠点を標的とし、その後の展開では米軍も参戦。イランは驚くべき速さで戦力を喪失したと報じられています。なぜイランは効果的な迎撃がほぼできなかったのか、なぜイスラエルはこのタイミングで攻撃を仕掛けたのか、そしてなぜトランプ政権は参戦を決断したのか。開戦からわずか数日の出来事を詳細に分析します。
イスラエル空軍による衝撃的な先制攻撃とその影響
イスラエル空軍は6月13日、約200機もの航空機を動員し、イラン全土の軍事・核関連施設100ヵ所超に対し、およそ330発の爆弾やミサイルによる一斉空爆を実行しました。これは事実上の宣戦布告であり、イランもこれに対し報復攻撃を開始。開戦初日から、イスラエル本土へ向けて長距離無人機「シャヘド」100機以上を発進させ、6月16日までにミサイル370発と数百機の無人機による攻撃を行ったとされています。
しかし、これらのイランによる報復攻撃の大部分は、イスラエルの高度な防空網によって迎撃され、イスラエル側に決定的な打撃を与えるには至りませんでした。イスラエルは攻撃開始からわずか3日後の6月16日には、ネタニヤフ首相がイランの首都テヘランの「制空権を掌握した」と発表。これは、イスラエル空軍がいつでも、イラン領内の望む場所を爆撃可能な状況になったことを意味します。
2025年6月15日、テヘラン郊外から見たイスラエル軍による空爆の様子
米軍の参戦:地下深くの標的への攻撃
戦況がイスラエル優位に進む中、6月22日には新たな展開がありました。イスラエル空軍の通常装備では攻撃が困難とされていた、地下60~80mという深くに埋設されたイランのウラン濃縮施設(核開発拠点)に対し、アメリカ軍が攻撃を加えたのです。使用されたのは、長距離巡航ミサイル「トマホーク」と、地下深部の強化施設を破壊するための「バンカーバスター(地中貫通爆弾)」でした。
この攻撃は、イスラエル単独の作戦能力を超えた標的への攻撃であり、アメリカがこの紛争に明確に参戦したことを示しています。地下深くの核施設への攻撃は、イランの核開発能力に致命的な打撃を与えることを目的としていたと考えられます。
元空将補が分析する「歴史的攻撃」の成功要因
航空自衛隊那覇基地で302飛行隊隊長を務め、F-4ファントムの搭乗経験を持つ杉山政樹氏(元空将補)は、今回のイスラエルによるイランへの「奇襲」を「歴史的な攻撃」と評価しています。
杉山氏の分析によれば、イスラエルが奇襲攻撃を仕掛けた6月13日は、イランがアメリカとの交渉に集中しており、軍事的にほぼ無防備な状態だったことが最大の要因の一つです。この隙を突くタイミングに加え、イスラエル軍は緻密な戦術を実行しました。まず、電子妨害(ジャミング)を用いてイラン側の無線通信を遮断し、視認が困難な夜間を選んで攻撃を開始。その後、F-16、イスラエル専用モデルのF-15I、F-35Iステルス戦闘機といった異なる種類の航空機が上空での任務を分担し、地上部隊とも連携を取りながら空爆を展開しました。これは、高度に計画されたハイブリッド型のゲリラ戦であり、地上と上空の両面からの連携が成功をもたらしたと杉山氏は指摘しています。
2025年6月22日、米軍攻撃後のイラン・フォルドゥ核施設
結論:短期決着の背景にあるもの
イスラエルの周到な計画に基づく奇襲攻撃、イラン側の防空網の不備と戦術的な隙、そして地下施設という難攻不落の標的を破壊するための米軍の参戦。これらの要因が複合的に作用した結果、イランは大規模空爆からわずか数日のうちにその戦力、特に核開発能力や軍事インフラに深刻な打撃を受け、短期間での戦況悪化を招いたと考えられます。今回のイスラエルによる攻撃は、その戦術的完成度と迅速な成果において、今後の軍事戦略において分析される事例となる可能性が高いと言えるでしょう。
参考:杉山政樹氏(元空将補)の分析より