ワシントンD.C.でドナルド・トランプ前米国大統領は24日(現地時間)、他国が日本と同様に米国へ大規模な投資を行えば、米国が課す関税率を引き下げることが可能だとの見解を示した。これは、日本の対米投資を引き合いに出し、各国の貿易政策における新たな可能性を提示する発言として注目されている。
日本の5500億ドル対米投資の背景
トランプ氏は同日、連邦準備制度(FRB)本部の建設現場で、「他国も金を出せば関税を下げることができるのか」という記者からの質問に対し、「そうだ。私は他の国も金を出して関税を下げること(buy it down)を認めるつもりだ」と明確に答えた。この発言は、日米貿易合意において日本が約束した約80兆円(5500億ドル)規模の対米投資について説明する中で飛び出したものだ。
ワシントンD.C.の演説で貿易政策について語るドナルド・トランプ元大統領
トランプ氏は、この日本の投資を単なる貸付ではなく「サイニングボーナス(契約締結時の支度金)」と表現し、「日本は我々に5500億ドルを支払い、関税を若干引き下げた」と主張。日本が事実上の前払いで関税引き下げを「購入した」との見方を示した。
関税率の引き下げと市場開放の価値
さらに、トランプ氏は日本が自国の経済市場をすべて開放することに同意した点に言及し、「それは簡単なことではなかった」と述べた。彼は続けて、「経済開放は、日本が支払った5500億ドルよりも価値がある」と強調。「だから経済開放と前払金を合わせて、我々は(関税率を)15%に引き下げた」と説明した。日本の元の関税率は約28%だったが、この合意により大幅な引き下げが実現したとしている。ただし、7日に日本へ書簡で通知された当初の関税率は25%だったとの情報もあり、数値には若干の差異が見られる。日米間の貿易合意では、相互の関税率と自動車関税率がそれぞれ15%に引き下げられた経緯がある。
他国との交渉と米国の経済的利益
トランプ氏は、欧州連合(EU)との貿易交渉も「かなりうまく進んでいる」と述べ、他にも複数の「非常に大きな取引」が進行中であることを示唆した。彼はこれらの交渉によって「米国は莫大な金を稼ぐことになるだろう」と締めくくり、投資と市場開放を交渉のテコとして貿易協定を進める方針を改めて示した。
今回のトランプ氏の発言は、国際貿易における関税問題に対し、直接的な対米投資や市場開放が有効な交渉手段となり得るという、彼の独特な貿易戦略を浮き彫りにした。日本との合意を成功例として、今後も同様のアプローチが他国との交渉にも適用される可能性が示唆されており、世界の経済・貿易関係に与える影響が注目される。