多摩川遺体事件:動画配信者「唯我」さん殺害、元交際相手父親と当時の交際相手の裁判員裁判初公判詳報

2023年12月、川崎市の多摩川でスーツケースから発見された男性遺体を巡る事件で、殺人と死体遺棄の罪に問われた男2人の裁判員裁判が6月30日、横浜地裁(佐藤卓生裁判長)で開かれました。遺体は動画配信者「唯我」の名で活動していた原唯之さん(当時46)。この事件には、原さんの元交際相手である西高舞被告(33)のほか、舞被告の母親、兄、父親、そして舞被告の当時の交際相手ら計5人が関与したとされています。今回、横浜地裁で裁判員裁判が始まったのは、舞被告の父親・西高昌浩被告(54)と、舞被告の事件当時の交際相手・岩城周平被告(40)の両名です。

横浜地裁で開かれた多摩川遺体事件の裁判員裁判初公判の様子横浜地裁で開かれた多摩川遺体事件の裁判員裁判初公判の様子

公訴事実とおおむね認めた両被告

初公判に現れた岩城被告はロングヘアを後ろで束ね、スーツ姿でした。一方、昌浩被告は白髪混じりの坊主頭に黒い長袖Tシャツとズボン姿でした。罪状認否において、両名共に起訴内容に対し「おおむねその通りです」と述べ、公訴事実を認めました。検察側による冒頭陳述やその他の証拠から、事件に至る詳細な経緯がおおむね明らかになりました。

検察側が描く殺害・遺棄計画の詳細

検察側は、5人が共謀して犯行に及んだと主張しました。計画では、原さんを舞被告の母親宅に呼び出し、原さんが好んでいたというコーヒー飲料にすりつぶした睡眠薬を混入させて飲ませ、眠らせました。その後、眠っている原さんの首を結束バンドで絞めて殺害。その遺体をスーツケースに入れ、重りをつけた上で多摩川に遺棄したとされています。この一連の犯行は、周到な計画のもと実行されたと検察側は説明しました。

事件の背景:原さんと元交際相手の関係とトラブル

5人が事件へ至った背景には、原さんと元交際相手である舞被告との間に生じたトラブルがあったと検察側は説明しました。もともと原さんのライブ配信の視聴者だった舞被告は、2023年2月にSNSを通じて原さんにメッセージを送ったことをきっかけに、同年3月から9月にかけて交際していました。原さんと別れた後、舞被告は岩城被告と新たに交際を開始しています。

交際中、原さんと舞被告は複数回ホテルに宿泊しましたが、宿泊費の支払いは主に舞被告のクレジットカードで行われていました。検察側冒頭陳述によると、「原さんからの返済は一部のみだったことや原さんの粗暴な言動」があったことから、舞被告は原さんに対して不満を募らせていました。

脅迫容疑での逮捕、そして悪化する関係

舞被告は2023年5月以降、原さんとの件を父親である昌浩被告にも相談するようになります。昌浩被告は当初、警察へ行くことを勧めていたとされます。同年9月、舞被告は滞在していた愛知県の警察に、原さんから脅迫されたとして被害届を提出。これにより原さんは逮捕されました。この頃から、舞被告は大阪に住む岩城被告の家に身を寄せていたといいます。

同年10月、原さんは舞被告への脅迫の罪で罰金刑に処せられ、釈放されましたが、原さんと舞被告らの間のトラブルは収まりませんでした。舞被告は岩城被告や昌浩被告になりすまして原さんにLINEメッセージを送り、過去のホテル代名目で金銭を要求しました。当初、原さんは支払いに応じる姿勢を見せていたものの、「執拗な連絡に嫌気がさしたことから、11月を最後に舞被告たちへの連絡をやめることを伝えた」(検察側冒頭陳述より)といいます。

殺意の形成と共謀:家族ぐるみの計画

原さんからの連絡が途絶えたことで、舞被告とその母親である美保被告(51)は怒りを募らせ、殺害を考えるようになったと検察側は主張しました。舞被告は岩城被告にも殺害の意図を伝え、昌浩被告にも協力を求め、その了承を得たといいます。殺害方法についても、首を絞める、寝袋に入れる、スーツケースに遺体を入れた後に多摩川に遺棄するなど、具体的な計画が話し合われました。この殺害計画は、兄の昌吾被告(34)も認識していたとされます。最終的に、舞被告の母親である美保被告が原さんを誘い出した上で、計画が実行されたと検察側は述べました。

初公判では、検察側が詳細な犯行経緯と背景を説明し、両被告がおおむね罪を認める形で審理が進みました。今後、他の関係者の裁判や証人尋問などが予定されており、事件の全容解明が進むことになります。

Source: Yahoo! News Japan