タイ凶悪犯刑務所の実態:終身刑囚が見た“手入れ”

TBS番組やYouTubeで紹介された竹澤恒男氏は、タイでのヤーバー密輸により逮捕され、死刑求刑の末、終身刑となりバンクワン刑務所に収容された。若年層に広がる薬物事犯や「闇バイト」に警鐘を鳴らす彼が見た、タイの「凶悪犯専用刑務所」における日常、「手入れ」と懲罰の様子を紹介する。

タイの薬物事犯と「闇バイト」の危険性

近年、若年層で薬物事犯が増加し、高収入をうたう「闇バイト」から密輸に関わる事例も報告されている。タイでは違法薬物の入手が比較的容易な一方、タイ政府の取り締まりは極めて厳しい。竹澤氏は自身の経験から、「ドラッグに手を出せば地獄が待っている」と強く訴える。その「地獄」の一端が、タイの過酷な刑務所での生活だ。

バンクワン刑務所の実態:終身刑囚が見た日常

竹澤氏が収容されたバンクワン刑務所は、死刑囚や長期刑囚が集まる凶悪犯専用の施設である。ここでは、規律違反や不正物品の所持を取り締まるための「手入れ」(強制捜査、点検)が頻繁に行われた。塀の中ではやりたい放題という印象もあるバンクワン刑務所だが、この「手入れ」だけは逆らうことができない絶対的なルールだった。

塀の中で繰り返される「手入れ」の実態

バンクワン刑務所では、不正物品の摘発を目的に、タイミングを見計らった抜き打ちの「手入れ」が頻繁に行われた。この手入れの厳しさや危険度は、実施する主体によって大きく異なった。
最も頻繁に行われたのは、刑務官による手入れだ。これは比較的穏便だったと竹澤氏は語る。麻薬や携帯電話、密造酒といった明らかな禁制品は処罰対象だが、MP-3プレーヤーやラジオ、DVD、さらには電気プレートなどの調理器具といった物品は、普段から黙認されていることも多く、見つかってもおとがめなしとなるケースが基本だったという。

刑務官や軍隊など、刑務所で「手入れ」を行う部隊刑務官や軍隊など、刑務所で「手入れ」を行う部隊

他部署から応援に来た刑務官に見つかった場合は没収されることもあったが、後で呼び出されて返還されるという具合だった。しかし、全ての刑務官が清廉であったわけではない。中には腐敗した者も存在し、麻薬密売グループから賄賂を受け取り、手入れの日程情報を事前に漏洩させるような不正行為が行われていたとされる。

結論:薬物が招く「地獄」

タイの薬物犯罪が招くのは、死刑求刑や終身刑といった過酷な現実であり、バンクワン刑務所のような施設での厳しい収容生活だ。塀の中では、頻繁な「手入れ」や一部刑務官の腐敗など、想像以上に過酷な日常が待っている。安易な気持ちで薬物や「闇バイト」に手を出せば、取り返しのつかない「地獄」が待っているという竹澤氏の言葉は、私たちにとって重い警鐘として受け止められるべきだろう。

【参考資料】
書籍『タイで死刑を求刑されました』著:竹澤恒男(彩図社)