NHK稲葉会長、体調不良で続投絶望か? 後任人事に菅氏影響力の行方

NHKの稲葉延雄会長(74)が自身の肺がんを公表してから約1カ月半が経過しました。医師からは「極めて初期で、転移もない」との説明を受けたとのことですが、既に手術や抗がん剤治療に入っています。会長の任期は来年1月末までですが、体調面からその後の続投は難しいとの見方が強まっています。今後のNHK会長人事が注目される中、政界の動向が影響を及ぼす可能性も指摘されています。

稲葉会長の健康状態と任期の見通し

稲葉会長は、5月21日に自身の肺がんを公表しました。「極めて初期で、転移もない」と説明しましたが、現在は治療中です。会長の任期は3年で、来年1月までとなっています。治療に入る前に「任期まではしっかり務める」と述べていますが、体調を最優先に考えると、任期後の続投は現実的ではないと広く見られています。

NHK稲葉延雄会長の記者会見の様子NHK稲葉延雄会長の記者会見の様子

NHK会長選考における政治的背景

NHK会長の選考は、実質的に時の自民党によって決定されてきました。副会長や専務理事などプロパー職員の幹部人事にも影響力を行使することがあり、会長にはほぼ例外なく自民党有力者の後ろ盾があります。稲葉氏の場合、岸田文雄前首相(67)に近い存在とされます。故・宮澤喜一元首相が稲葉氏を日本銀行時代から高く評価していたこと、さらに宮澤氏の甥で岸田氏の従兄弟にあたる宮澤洋一元経済産業相(75)と旧知の仲であることなどが、岸田氏からの信頼と推薦に繋がったと考えられます。

後任選考の現状と政局の影響

本来であれば、次期NHK会長の選考は首相を中心に進められます。しかし、現在は昨年10月の衆院選での与党過半数割れや、今月20日の参院選が接戦となっている状況で、政界は自らのことで手一杯という側面があります。そのため、現時点では次期会長選考に向けた具体的な動きは見られないようです。野党総務族議員からも、「次期会長選びどころではない」との声が聞かれます。

菅氏の影響力とNHK受信料への示唆

首相の石破茂氏(68)は総務省での政務経験がなく、NHKの内情に必ずしも明るくないとの見方が一般的です。同様に、村上誠一郎総務相(73)も今回が初の総務省政務経験となります。こうした状況から、最終的に総務族のドンとされる自民党副総裁の菅義偉氏(76)が、次期会長人事を主導する可能性が高いと予測されています。

菅氏は、2023年10月のNHK受信料値下げ(衛星プラス地上契約月額2220円→1950円)を強く推進した実績があり、総務相在任中の2007年には「2割値下げ」を主張した過去もあります。もし菅氏の主導で新会長が決まることになれば、NHK側は警戒を強めるでしょう。菅氏の後押しを受けた新会長が、その値下げ意向を汲み、更なる受信料引き下げを求める可能性も否定できません。これは、NHKの経営や番組編成にも大きな影響を与えうる問題です。

NHKの稲葉会長の健康問題により、その後の去就と次期会長人事が不透明な状況です。現在の政局を背景に、選考プロセスは遅れていますが、菅義偉氏のような政界実力者の影響力が強く働く可能性があります。新体制がNHKの運営、特に受信料問題にどう向き合うのか、今後も注目が集まります。