2024年度の「輸入食品等の食品衛生法違反事例」(厚生労働省、2024年4月~2025年3月)を確認すると、中国産食品の違反事例は170件にのぼり、国別で最多だった。
違反事例が最も多かったのは生鮮にんじんの19件で、違反内容の大半は基準値を超えるメピコートクロリドだった。植物の成長調整剤として用いられる農薬で、過剰摂取による腎臓や肝臓への影響が指摘されている。ほかにも、いったピーナッツや大粒落花生から発がん性物質のアフラトキシンが検出されるなどしている。食品の安全に詳しいジャーナリストの小倉正行氏が語る。
「日本は身近な農産物の多くを中国に依存しています。輸入食品のなかで、例えばにんじんの94%、たまねぎの93%、ブロッコリーの92%を中国産が占めている。
輸入量自体が多いために違反件数も多くなっている部分はありますが、問題は安全面の管理体制です。中国国内では農薬の管理が不十分で、日本で禁じられた農薬が使用されているケースも珍しくない。食の安全が担保されないまま、安価ゆえに中国産食品に頼り続ける構図があるのです」
消費者にできる自衛策はあるのか
2024年度に中国からの輸入食品で大腸菌群が検出された食品輸入会社の社長が苦しい事情を明かす。
「当社では製造工程での滅菌処理を工程表でチェックしたうえで、自主的にサンプリング調査も行なっていますが、いざ現地を査察すると衛生管理に問題があるケースが珍しくない。日本にいながらすべてを確認するのは至難です」
加えて違反が発覚した際に別の取引先を探すのが非常に難しいという。
「中国の工場側の改善策や対応に問題があれば取引を中止し、別の工場に切り換える必要がありますが、『味が変わった』というクレームが多い。安全性を担保しつつ、同じ値段で以前の商品に近い品質のものを作れる工場を探すのは大変です」
消費者にできる自衛策はあるのか。
「普段口にしているものがどこで生産されたものなのか、日頃からパッケージを確認する習慣をつけるしかない。そのうえで、可能な限り加熱処理をして食べることを意識しましょう」(小倉氏)
もちろん中国産食品のすべてが危ないわけではなく、衛生管理を徹底している現地工場もある。前ページの表はあくまでリスクを知るための指標として参考にしてほしい。
口に入るものだからこそ、私たちは最大限の注意を払う必要があるのだ。
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※週刊ポスト2025年7月11日号