「世界最強級の猛毒植物」とされるバイカルハナウドの可能性のある植物が、日本の大都市・札幌にある北海道大学のキャンパス内で見つかった。これまで国内未確認だった外来植物の発見は大きな波紋を広げ、その毒性や見分け方について関心が高まっている。この植物が日本にどうやって入ってきたのか、そしてすでに全国に広まっているのか、野草研究家の解説を交えつつ、現状を掘り下げる。
猛毒バイカルハナウドの特徴と危険性
野草研究家の山下智道氏によると、バイカルハナウドは西アジア原産のセリ科の植物で、通常のセリ科植物よりはるかに大きく3~5メートルに成長するのが特徴だ。最も危険なのはその樹液で、皮膚に触れた状態で紫外線を浴びると、重度のやけどのような炎症を引き起こす。この炎症は長引き、傷痕が残ることもあり、目に樹液が入れば失明の恐れもある。また、茎に生えている毛にも毒成分が含まれるため、肌が弱い人は毛に触れるだけでも炎症を起こす可能性があるという。見つけた場合は、絶対に触れないことが重要だ。
バイカルハナウドの樹液に触れたことによる皮膚炎の事例。重度のやけどのような症状が見られます。
見間違いやすい植物との区別方法
バイカルハナウドとよく似た在来種の植物に、北海道や本州北部に自生するエゾニュウやオオハナウドがある。これらの植物も大きくなるため、今回のニュースを受けて「バイカルハナウドではないか」という報告がSNSなどで見られるが、その多くはエゾニュウやオオハナウドだという。山下氏によれば、最もわかりやすい見分け方は「大きさ」と「茎の色」だ。エゾニュウやオオハナウドが3メートルを超えることはほとんどないのに対し、バイカルハナウドは3メートル以上に育つ。ただし、生育途中の若い個体は1~2メートルの場合もあるため、その際は茎の色に注目する。バイカルハナウドの茎は紫色がかっているが、エゾニュウやオオハナウドの茎は緑色をしている。
北海道での発見と今後の課題
北海道大学で発見された疑いのある植物は、現在、調査のため刈り取られている。この植物が正式にバイカルハナウドと同定されれば、日本国内での初の生育確認となる。現状ではまだ正式に特定されていないため、環境省が指定する「特定外来生物」には含まれておらず、公的な駆除の対象とはなっていない。しかし、もし広がりを見せれば、その強い繁殖力と危険な毒性から、今後北海道各地で見つかる可能性も懸念されている。
北海道大学キャンパス内で発見された、バイカルハナウドの可能性のある巨大植物。現在調査のため刈り取られています。
札幌という市街地での発見報告は、猛毒の外来植物が思いがけず身近にある可能性を示唆している。バイカルハナウドはセリ科植物としては異例の大きさと、触れるだけで重度の皮膚炎や失明のリスクがある毒性を持つ。似た在来種との見分け方を知り、不審な巨大植物を見かけたら絶対に触れず、自治体などに連絡することが肝要だ。正式な確認と今後の対策が待たれる。