小泉今日子、ドラマ「最後から二番目の恋」で魅せた「還暦の輝き」 その生き方・年齢の重ね方とは?

小泉今日子と中井貴一がW主演を務めるドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)が、6月23日に惜しまれながら最終回を迎えた。2012年の第1作からはじまり、テレビ局プロデューサーの吉野千明(小泉今日子)と鎌倉市役所職員の長倉和平(中井貴一)を中心としたミドルエイジ世代の仕事や恋愛の悩みをリアルかつユーモラスに描いてきた人気シリーズだ。その壮大なフィナーレは、主人公・千明の60歳の誕生日という節目で締めくくられた。

日本では古くから還暦祝いに赤いちゃんちゃんこを贈る慣習があるが、令和の60歳は現役で活躍する人も多く、見た目も若いことから、贈る側も贈られる側も少々気恥ずかしさを感じることもあるだろう。しかし、ドラマの中で千明が赤いちゃんちゃんこをファッショナブルに着こなす姿は印象的だった。白髪を活かしたヘアスタイルや、笑った時にできる目尻のしわさえも魅力的に映り、多くの視聴者からため息が漏れたに違いない。

「最後から二番目の恋」最終回で還暦の赤いちゃんちゃんこ姿の小泉今日子さん「最後から二番目の恋」最終回で還暦の赤いちゃんちゃんこ姿の小泉今日子さん

令和の時代に輝く“永遠のアイドル”としての魅力

このドラマが13年もの長きにわたり愛され続けた要因は多岐にわたる。脚本家・岡田惠和氏による温かくユーモア溢れるストーリー、実力派俳優たちが織りなす軽妙なやりとりなどが挙げられる。だが、やはり最大の魅力は、ヒロインである千明が終始一貫して魅力的だったことだろう。さらに言えば、演じる小泉今日子さん自身が、この13年間、多くの人々にとって憧れの存在であり続けたことも大きい。視聴者からは「千明さんとキョンキョンは私の憧れ」「こんな風に可愛くカッコよく歳を重ねたい」「キョンキョンみたいな大人になると決めた」といった声が多数寄せられており、演じる本人と役柄が限りなく一体化した「吉野千明」という存在に心底惚れ込んでいる人が多いことがうかがえる。小泉さんと千明が老若男女問わず広く愛される理由。それは、物語の主人公として求められる「憧れ」と「共通性」という二つの要素を、どちらも兼ね備えている点にあると言える。

「60歳までは走り続ける」体現する生き方

50代になっても敏腕プロデューサーとしてドラマ制作チームを率いる千明と、「60歳までは走り続ける」と宣言し、歌手や俳優として今なお第一線で活躍を続ける小泉さん。ドラマの中で千明は定年後、自身のドラマ制作会社を立ち上げるが、小泉さん自身も2015年に株式会社「明後日(あさって)」を設立し、舞台制作やプロデューサー業など、表現者としての活動の幅を広げている。

千明と小泉さん、二人に共通するのは、自立した聡明な大人の女性であり、頭の回転が速いことだ。小泉さんは今年2月、Netflixで配信された恋愛リアリティショー『オフラインラブ』でお笑いコンビ・令和ロマンと共にMCを務めた。『オフラインラブ』は、顔も名前も知らない男女10人がデジタルデバイスを手放し、ガイドブックだけを頼りにフランス・ニースで10日間を旅する様子を追った番組である。スマホのない青春時代を過ごした世代代表として番組に参加した小泉さんの、鋭さの中にも参加者を誰一人傷つけない愛あるコメントは、視聴者からも好評を博した。これは豊富な人生経験に加え、読売新聞で10年間、読書委員を務めたこともある読書家ならではの、言葉の引き出しの多さが窺えるエピソードだ。

千明もまた、周囲の女性たちから人生相談を受けることが多く、その度に的確なアドバイスを送るが、決して押し付けがましくない。例えば、『続・続・最後から二番目の恋』の第7話。周囲と比べて自分には何もないとこぼす典子(飯島直子)に寄り添おうとする千明だが、自分が有効な言葉を何も言えていないと気づくと、即座に謝罪する場面があった。これは現実の小泉さんとも重なる部分がある。ドラマ放送期間中、小泉さんは飯島直子さんの冠番組『飯島直子の今夜一杯いっちゃう?』(BSフジ)にゲスト出演した際、撮影中に監督に対して意見したことを振り返り、後から万里子役の内田有紀さんに「ちょっと言い方が怖すぎましたね」と注意されて反省したエピソードを明かしている。その上で、「対等な仲間になったんだなと思って嬉しかった」と語っており、年下相手にも素直に反省し、対等な関係性を喜ぶ人柄が垣間見える。

千明と小泉今日子さん。フィクションと現実を行き来しながら、多くの日本人が憧れる「年齢の重ね方」や「自分らしい生き方」を体現する彼女たちの存在は、令和という時代において、ますますその輝きを増している。

出典:Yahoo!ニュース / 文春オンライン