終戦後の混乱が続く中、人々は少しずつ未来への希望を見出そうとしていた。連続テレビ小説「あんぱん」第71話は、新聞記者として新たな道を歩み始めたのぶ(今田美桜)と、復員した嵩(北村匠海)の再会から始まる。父と同じ新聞記者の道を志す嵩が、困難の中で新たな夢を見つける姿が描かれる。
嵩、新聞社採用試験に挑む
のぶの父も勤めていた高知新報の採用試験に、嵩は挑む。しかし、戦地から戻ったばかりの嵩には、一般社会での振る舞いは容易ではなかった。試験会場では極度の緊張に見舞われ、面接でも自己PRでマイナス面ばかり。長所として挙げた「餅のような粘り強さ」も面接官の心には響かず、関心記事を「漫画」と答えて「受ける会社を間違えた」と呆れられる始末だった。
「あんぱん」第71話より、新聞社試験に挑む嵩(北村匠海)の様子
戦争と「正義」、そして「希望」
誰が見ても不合格は明らかだった。失意の嵩をのぶが屋台へ誘う。そこで嵩は、戦争で見た「正義」の曖昧さを語り始める。「東洋平和のため」と信じて戦地に赴いたが、中国で見た現実は、自らの「正義」が相手には悪となりうる厳しさだった。逆転しない「正義」は存在するのか、という問いに悩む中、彼が出会ったのが、米軍のガラクタに紛れていた「希望」――漫画だった。言葉がわからずとも、絵を見るだけで笑顔になれたというその体験が、嵩に新たな光をもたらす。
世界一面白いものを作る夢
漫画との出会いは、嵩に言葉の壁を超えて感情を動かす「絵」の力を実感させた。同時に、日本が戦争だけでなく娯楽でも敗れた事実に、彼は深い悔しさを覚える。だからこそ、「あれよりもっと、世界一面白いものを作りたい」と、嵩はのぶに熱く語るのだった。かつて「たっすいが」と呼ばれた彼の内に、揺るぎない、しかし大きな目標が芽生えていた。
第71話は、新聞記者への道が絶たれた嵩が、戦争経験を経て「正義」を問い、漫画に「希望」を見出し、世界一面白いものを作ると誓うまでを描いた。終戦後の混乱の中、新たな夢を見出す人々の姿が描かれた回だ。