あなたは、目玉焼きには何をかける派だろうか。塩、醤油、塩胡椒、あるいはマヨネーズやケチャップなど、この話題はしばしば論争となり、多くの調査が行われている。日本は1人当たり卵消費量が世界第2位(国際鶏卵委員会[IEC]、2022年)であり、日本人の卵に対する情熱は相当なものがある。しかし、その日本を上回る世界一の卵消費国メキシコでは、日本人の想像を超えた、サルサをたっぷりかけた驚きの卵料理が存在する。世界の台所探検家が現地で体験した、メキシコの食卓に欠かせない目玉焼き料理「ウエボス・ランチェロス」を紹介する。
世界一の卵消費国メキシコの目玉焼き文化
日本人が1人当たり年間339個の卵を消費するのに対し、メキシコは392個と、まさに世界一の卵大国である(出典同上)。メキシコでは、私たちが慣れ親しんだ塩や醤油といった目玉焼きの食べ方とは全く異なるスタイルが主流となっている。その驚きは、メキシコ中部のクエルナバカ市に滞在した際に体験した朝食から始まった。
家庭では毎日卵が食卓に並び、朝食の支度をする家族は、まず玉ねぎ、トマト、青唐辛子を炒めてソースを作る。このソースは「サルサ」と呼ばれ、タコスをはじめ多くのメキシコ料理に不可欠な存在だ。朝食に目玉焼きを作る際、「卵はいくつ食べる?」と聞かれた探検家が「1個で」と答えたところ、体調を心配されたという。家庭では一人あたり2個、あるいは3個焼くのが当たり前で、「じゃあひとまず2個ね」と希望を無視して焼き始めたほど、卵をたくさん食べる文化があるのだ。その日の朝食では、家族3人で7個の卵が焼かれたという。
メキシコのウエボス・ランチェロスを彷彿とさせる目玉焼きの写真
「ウエボス・ランチェロス」:サルサで味わう目玉焼き
メキシコで主食とされるトウモロコシの薄焼きパン「トルティーヤ」を皿に2枚敷き、その上にカリッと焼かれた目玉焼きをのせ、出来立てのサルサをお玉一杯たっぷりとかける。これが「ウエボス・ランチェロス」、スペイン語で「農夫風卵料理」という意味のメキシコ定番朝食だ。目玉焼きが隠れるほどにかかった赤いサルサは目にも鮮やかで、まさに朝から元気をくれる一品である。
サルサは、トマトの甘味の中にピリッと爽やかな辛みがあり、それだけでも十分に美味しい。半熟の目玉焼きにナイフを入れ、サルサを絡め、トルティーヤと共にフォークでまとめて頬張ると、その美味しさに衝撃を受ける。酸味や辛みのあるサルサと黄身が絡むことでクリーミーになり、卵とサルサのどちらが主役か分からないほどの一体感を生み出す。そして、すべての汁気を吸い込んだトルティーヤが、この料理の構造を完璧なものにしている。目玉焼きはシンプルに塩か醤油で食べるものだという日本の常識を覆す、たっぷりのサルサで味わうという新しい楽しみ方との出会いだった。
家庭のホストは、ウエボス・ランチェロスも美味しいけれど、「ウエボス・モトゥレニョス」の方がもっと好きだと語る。それは、さらに色々なものをのせるという。別の日の朝に作ってもらった「ウエボス・モトゥレニョス」も、ベースとなるサルサの材料はウエボス・ランチェロスとだいたい同じだが、こちらの方がさらっとしているという。メキシコには何十種類ものサルサが存在し、料理によって使い分けられているのだ。この時も、「卵はとりあえず2個ね」と言われ、一人2個の目玉焼きが焼かれた。
まとめ:世界の卵料理の多様性
日本における目玉焼きの食べ方を巡る議論とは異なり、世界には驚くほど多様な卵料理が存在する。中でもメキシコの「ウエボス・ランチェロス」は、サルサとトルティーヤと共に目玉焼きを味わうという、日本人にとっては新鮮で衝撃的な食文化体験だ。卵消費量世界一の国ならではの、大胆かつ美味しい卵の楽しみ方は、世界の食卓の奥深さを示している。シンプルな食材である卵が、地域や文化によってこれほどまでに豊かな料理に姿を変えることは、食の探求の面白さを改めて感じさせてくれる。