屋根リフォーム詐欺の巧妙な手口とは?高齢者を狙う悪質業者の実態と対策

近年、屋根のリフォームを巡る詐欺被害が後を絶ちません。特に高齢者を狙った手口が巧妙化しており、国民生活センターによると、屋根工事の点検商法に関する相談者の約8割が60歳以上というデータが示されています。一般の消費者にとって、屋根材の劣化状況や適正な工事費用を見極めることは難しく、この知識の差に付け込んだ詐欺が増加しているのが現状です。悪質な業者は、消費者の不安を煽り、高額な契約を迫る典型的なパターンを繰り返しています。屋根工事業者への支援サービスを手掛け、ウェブメディア「やねプロ」を運営するハウスケープ株式会社の代表取締役、明正剛典氏に、具体的な手口とその対策についてお話を伺いました。

「近くで工事をしていたら、お宅の屋根が…」高齢女性が陥った典型的な詐欺事例

神奈川県郊外の一戸建てに住むUさん(70歳/女性)は、数年前に屋根リフォーム業者を名乗る人物から突然の訪問を受け、その場で工事契約をしてしまった経験があります。Uさん宅は建物面積がおよそ30坪の2階建てで、新築から30年が経過。以前、15年ほど前に一度屋根塗装を行っており、その際は不動産会社が手配し、費用は約80万円だったといいます。

「いかにも業者といった風貌の男性が、『近くで工事をしていたら、お宅の屋根が少し割れているのが見えた。放置すると屋根材の破片が飛んで近所に迷惑がかかる恐れがある』と説明してきました。無料で点検してくれるというので、それならとお願いしたんです。実際に業者が屋根に上って撮影したという写真を見せてもらうと、確かに屋根材にひび割れが確認できました。危険だと言われたので、見つかってよかったと思い、工事をお願いすることにしました。15年前に一度塗り替えていたので、そろそろ時期なのかな、とも感じたんです」とUさんは当時の心境を語ります。

屋根全面塗装の工事で請求された金額は150万円ほど。「高い」と感じたUさんでしたが、「古い家だから仕方ないのかもしれない」と自身を納得させ、支払いに応じました。しかし、後日近所の話を聞くと、Uさん宅だけが突出して高額な費用を払っていたことが判明。新興住宅地のため、近隣の家屋もUさん宅と坪数や築年数が大きく変わらないにも関わらず、です。Uさんは「なぜうちだけこんなに高かったのか理解できません。悪徳業者だったのかもしれません」と肩を落とし、悔しさを滲ませました。

訪問販売で屋根の点検を装い詐欺を働く業者のイメージ訪問販売で屋根の点検を装い詐欺を働く業者のイメージ

専門家が語る屋根リフォーム詐欺の典型的な手口と見分け方

Uさんの事例について、明正氏は「まさに典型的な詐欺の手口です」と断言します。

「屋根リフォーム詐欺の主な手口は、訪問販売です。『点検に来た』などと称して屋根に上り、その場で意図的に屋根の一部を破壊するケースが多く見られます。そして、破壊した部分の写真を被害者に見せつけながら、言葉巧みに不安を煽り、強引に契約に持ち込むのです。屋根の劣化が経年によるものか、それとも作為的な破損によるものかは、プロが見ればすぐに判別できますが、残念ながら一般の消費者には見分けがつきにくいため、その弱みに付け込まれてしまいます」

明正氏は、さらに悪質な業者の実態を明かします。
「リフォーム詐欺を行う業者は、基本的に屋根修理の専門家ではありません。屋根材のパンフレットを見せながらそれらしい説明をしたり、単に足場だけを組んで作業を装ったりと、実際には修理がまともに行われないケースも存在します。また、専門の業者に外注する際も、高額な中間マージン(ピンハネ)を上乗せするため、消費者に数倍もの費用が請求されることもあります。これが、Uさんのように近隣と比べて高額な請求を受ける要因となるのです。」

屋根リフォーム詐欺から身を守るためには、突然の訪問販売や無料点検には細心の注意を払うことが肝要です。少しでも不審に感じた場合は、即座に契約せず、複数の信頼できる業者から見積もりを取り、比較検討することが最も重要だと言えるでしょう。


参考文献