中国の列車内で、猛烈な暑さに耐えかねた乗客がハンマーで窓ガラスをたたき割る前代未聞の出来事が発生しました。浙江省で発生した列車衝突事故後、車内冷房が停止し、高温の中で立ち往生した乗客たちの行動とその背景に迫ります。
猛暑の中で停止した列車、蒸し風呂状態の車内
事件は7月2日夜、中国東部・浙江省で発生しました。上海鉄道局が運行する列車が別の列車と衝突する事故が発生し、これにより列車は停車を余儀なくされました。この日の浙江省は最高気温38度を記録しており、事故後に車内の冷房設備が完全に停止してしまったといいます。
蒸し暑さが充満する車両内には多数の乗客が取り残され、その中には上半身裸になる男性も多く見られました。閉め切られた空間で気温は上昇し続け、乗客たちは体力の限界に近づいていました。
乗客の悲鳴と乗務員との攻防
耐え難い暑さの中、乗客からは悲鳴にも似た声が上がりました。「暑すぎて死にそうだ!」「水はありますか?もう我慢できないから顔を洗うわ」など、苦痛を訴える声が相次ぎ、乗客たちは乗務員に対し、状況改善を強く求めました。
乗務員に詰め寄った乗客の一人は「いつになったら電気が通るの?」と問い詰めましたが、乗務員からは「修理は進んでいると思いますが、私に聞かれても何もできません」といった対応が返されるのみ。切羽詰まった状況と具体的な解決策が示されないことに対し、乗客の苛立ちは募る一方でした。「死んでしまうよ!」と叫ぶ男性客もおり、車内の空気は緊迫した状態となりました。
高温で蒸し暑い中国の列車内で立ち往生し、上半身裸になった乗客たち
多くの乗客が換気を切望する中、一人の男性客が強い口調で「なんでドアを開けないんだ!列車内にいるだけで外に出るなんて言ってない。そうじゃなきゃ窓ガラスを割るぞ!」と訴えかけ、乗務員との間で激しいやり取りが始まりました。これは換気という最低限の要求すら満たされない状況への強い抗議でした。
ハンマーで窓を破る、異例の行動へ
男性客の訴えも聞き入れられず、状況が改善されないまま時間が経過する中、遂に一人の男性が行動を起こしました。彼は乗務員の制止を振り切り窓に近づくと、手に持っていたハンマーで列車の窓ガラスをたたき割ったのです。
突然の窓ガラス破損に一瞬の静寂が流れましたが、直後に他の乗客から歓声が上がりました。「ナイス!いいぞ!」「英雄だ!」と、この異例の行動を称賛する声が多数聞かれました。窓が割れたことで車内に外の空気が流れ込み、わずかながらも換気ができるようになったためです。
中国の列車内で乗客がハンマーでたたき割った窓ガラスの様子
窓ガラスが割れた後も、乗務員は割れた窓に近づこうとする乗客を遠ざけようと立ちふさがり、混乱は続きました。窓ガラスを割った男性はその後、警察に連行され、注意を受けたとのことです。
日本での場合は?鉄道ジャーナリストの見解
今回の中国での出来事について、日本の鉄道における同様の状況の可能性はどうなのでしょうか。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏は、FNNの取材に対し見解を述べています。
梅原氏はまず、列車の空調装置について「非常に電力を消費するため、電源が途絶えてしまったら動かすことはできない」と技術的な限界を指摘。その上で、日本の場合は、もし列車が長時間停車し、車内環境が悪化した場合、すぐに乗客の安全を最優先した避難誘導に移るのが一般的であると説明しました。日本ではマニュアルが整備されており、乗務員は乗客の安全確保のための行動基準に従うため、今回のような乗客による窓破損といった事態は起こりにくいと考えられます。
まとめ
中国で発生した今回の列車事故における窓ガラス破損騒動は、猛暑の中での冷房停止という特殊な状況下で、乗客が極限まで追い詰められた結果と言えるでしょう。密閉された空間での高温と換気不足は、乗客の身体的・精神的な限界を超えさせ、異例の行動へと駆り立てました。一方、日本では長時間停車時の避難誘導など、乗客の安全を最優先するプロトコルが確立されており、同様の事態は起こりにくいと考えられます。今回の中国での出来事は、非常時における車内環境の維持と、乗客への適切な情報提供・対応の重要性を改めて浮き彫りにしました。
参照:FNNプライムオンライン、中国地元メディア