2025年8月5日、参議院予算委員会で、参政党の神谷宗幣代表(47)が初めて質疑に立ちました。衆参両院を通じて党として初の予算委員会での質疑であり、日本の政治動向に注目が集まる中、神谷氏の発言は多方面で波紋を広げています。主要な論点は、党の掲げる「反グローバリズム」の理念と、具体的な日米関税交渉への提言でした。
参院予算委員会で質疑に立つ参政党の神谷宗幣代表。日本の国益と日米関係のあり方が焦点に。
「日本人ファースト」が意味するもの:反グローバリズムの強調
神谷氏は質疑に先立ち、参政党が参院選で掲げた「日本人ファースト」というスローガンについて、改めてその真意を説明しました。これは「国境を超えた経済競争による行き過ぎた新自由主義、多国籍企業に富が偏在し、それぞれの国の中間層が没落してしまうようなグローバリズムに警鐘を鳴らす、『反グローバリズム』を意味する」と強調。国内生産の強化や安価な労働力としての移民受け入れの規制を通じて内需を拡大し、「中間層の復活」を目指すという党の経済政策の根幹を力強く訴えました。この説明は、党の政策理念を明確にするものとして注目されました。
日米関税交渉への提言とアルゼンチン事例
今回の予算委員会では、日米間の関税合意を受けた集中審議が行われました。神谷氏は、アルゼンチンが日本よりも有利にアメリカとの関税交渉を進めていると指摘。その理由として、アルゼンチンのミレイ大統領がトランプ大統領との関係構築を早期に行ったこと、さらにWHO脱退表明やアメリカの政策に倣う姿勢を示している点を挙げました。
その上で、神谷氏は石破茂首相(68)に対し、ウクライナ支援の見直し、脱炭素からの脱却、政府によるSNS規制の撤廃など、アメリカの動向に合わせた方針を日本政府が検討しているか否かを尋ねました。これは、日本の外交・経済政策における対米関係のあり方を問うものでした。
石破首相の反論と神谷氏の再提言
石破首相は、神谷氏の問いに対し、「国益に資するかどうかは我が国が主体的に判断するもの。アメリカから言われて関税の取引の材料としてこれらを使うことが、必ずしも正しいとは思っておりません」と明確に反論しました。アルゼンチンとの比較についても、「アルゼンチンとは全く貿易構造が違う」とし、日本とアメリカは「安全保障上、非常に緊密な同盟関係にある」ことから、「アルゼンチンと全く同列に論じるべきではありません」との見解を示しました。
しかし、神谷氏は日米同盟関係には一定の理解を示しつつも、アメリカと妥結した「対日関税15パーセント」「80兆円の対米投資(枠)」の条件は「いい条件とは思えない」と表明。「不平等条約のようなものを一方的に押し付けられたような感覚を持っている国民はたくさんいると思います」と指摘しました。さらに石破首相に対し、「今回の取り決めを守る必要はないと思うんです。いかにこの15パーセントを0にしていくかという交渉を、これから政府をあげてやっていく必要がある」と強く提言しました。
「関税ゼロ」提言が呼んだ「反グローバリズム」矛盾論争
神谷氏は最後に、「関税交渉はまだこれから続くと思いますので、ぜひより良い結果が導けるように頑張っていただいて、またこういった場で議論させていただきたいと思います」とエールを送りました。
しかし、神谷氏が「関税ゼロ」に向けた交渉を促したことに対し、X(旧Twitter)では「反グローバリズム」との矛盾を指摘するツッコミが続出しました。「関税をゼロに近づけろって、反グローバリズムどころか、むしろグローバリズム推進でしょ」「関税を0%にまで下げるというのは『反グローバリズム』の真逆」といった意見が見られました。
経済部記者は、「神谷氏は質疑の冒頭で、経済競争が生み出す過度な新自由主義的価値観を憂慮していましたが、一般的に、関税が低くなればなるほど自由貿易は活発化し、外国からの商品もより入ってくることになります。結果として一部の多国籍企業を利する『グローバリズム』を肯定することに繋がるのではないでしょうか」と解説しました。トランプ大統領が高い関税で自国産業を守れると主張するように、神谷氏も日米それぞれの輸出産業を守るという意味合いで「関税ゼロ」に向けた働きかけを求めている可能性も指摘されます。しかし、参政党が結党以来一貫して「反グローバリズム」を掲げてきただけに、今回の発言と党の基本方針に矛盾を感じる国民も多いでしょう。
結論
参政党の神谷宗幣代表による初の参院予算委員会での質疑は、日米関税交渉のあり方と、党の「反グローバリズム」という理念の具体的な適用における複雑性を浮き彫りにしました。神谷氏の「関税ゼロ」への提言は、国民の間で党の掲げる政策との整合性について活発な議論を巻き起こしています。今後の日米間の経済交渉と、参政党の政策展開がどのように進むのか、引き続き注目が集まります。