多摩地区初の都立チャレンジスクール「立川緑高校」志願者殺到の理由

不登校児童生徒数が過去最高を更新し続ける深刻な状況の中、新たな学びの場として注目を集めているのが、今年4月に東京都が指定する「チャレンジスクール」として開校した東京都立立川緑高等学校です。多摩地区では初となるこのチャレンジスクールは、不登校や中途退学を経験した生徒を受け入れることを主な目的としていますが、開校初年度から最終応募倍率が2.55倍に達するなど、異例の注目度となっています。なぜこれほど多くの志願者が集まったのでしょうか。開校間もない同校を取材し、その特色と人気の秘密を探ります。

JR西国立駅から徒歩約10分。真新しい校舎が迎えてくれるのが、東京都立立川緑高等学校です。チャレンジスクールは、午前・午後・夜間の3部制、総合学科、単位制(74単位以上で卒業)の都立定時制高校で、学力検査や調査書によらない多様な選抜方法で生徒を受け入れています。生徒一人ひとりが目標を見つけ、様々な挑戦ができるように支援を行うチャレンジスクールですが、立川緑高校にはどのような独自の取り組みがあるのでしょうか。

学校の正面玄関を入るとすぐに、生徒を温かく迎え入れる「校内居場所カフェ」があります。中庭からの光がたっぷりと差し込む明るい空間にはテーブルと椅子が並べられ、スタッフと生徒が和やかに談笑する姿が見られます。校長の石田和仁氏は、「玄関から入ってすぐ、生徒全員が通る場所ですから、『よく来たね』という気持ちで生徒を迎え入れるようにしています」と語ります。このカフェは、空き時間だけでなく授業中も、生徒が自由に訪れることができる“サードプレイス”として機能しています。東京都のユース・ソーシャルワーカー(YSW)が常駐するほか、教員経験者や連携大学の学生らがスタッフとして生徒と関わっており、生徒たちは安心して過ごせる居場所を見つけることができます。斜向かいの職員室はガラス張りになっており、教員が生徒の様子を自然に見守れるように配慮されています。

さらに、しんどくなった時に利用できるリフレッシュルームと、授業の学び直しなどをサポートする校内別室指導室からなる「コイコイルーム」も設置されています。校内の随所には、一人で静かに過ごせる場所も用意されており、生徒がその時の気持ちに合わせて居場所を選べるようになっています。

東京都立立川緑高等学校の校舎外観。多摩地区初の都立チャレンジスクールとして開校した新しい学び舎。東京都立立川緑高等学校の校舎外観。多摩地区初の都立チャレンジスクールとして開校した新しい学び舎。

同校の校舎は、旧都立多摩図書館跡地を取り壊して一から建設されました。このため、既存のチャレンジスクールの知見や、学びの多様化学校として知られる高尾山学園のアイデアなどを参考に、「チャレンジスクールに必要な施設とは何か」を徹底的に考えてデザインされています。このハード面の設計が、生徒を手厚くサポートするセーフティネットの構築に大きく貢献しています。YSWが常駐する校内居場所カフェに加え、常時開いている保健室、スクールカウンセラー(SC)が週3日常駐する2つのカウンセリング室、個別相談用の6つのガイダンス室などが設けられ、生徒の不安や悩みに対応し、気になる変化を素早く察知して共有する体制が整えられています。

石田校長は、「チャレンジスクールに応じたハードの設計と、人員などのソフトの充実。この2つがうまくマッチし、よいスタートが切れたと感じています」と、志願者殺到の背景にある成功要因を分析します。温かく迎え入れる「居場所」と、生徒一人ひとりをきめ細やかに支える「セーフティネット」。立川緑高校の取り組みは、不登校を経験した生徒たちが再び学校で安心して学び、未来への一歩を踏み出すための希望となり得るでしょう。

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