国連および国際移住機関(IOM)は、イスラエルとの紛争終結後わずか16日間で、イランが50万人以上のアフガニスタン人を国外追放したと報告しています。イラン政府は以前から、書類不備の数百万人のアフガン人を追放する意向を示しており、彼らはイラン国内でしばしば過酷な条件下、低賃金労働に従事していました。
強制送還の規模とスピードアップ
IOMの発表によると、6月24日から7月9日までの期間に、計50万8426人のアフガン人がイラン・アフガニスタン国境を越えてイランを出国しました。イランが非正規滞在者に設定した出国期限は13日でした。これに先立つ強制送還はピーク時には1日に5万1000人に達し、その後も毎日3万人以上が国境を越えました。この強制送還は、イランが3月に発表したプログラムの一環ですが、イスラエルとの12日間の衝突以来、そのペースが劇的に加速しています。
理由とされるスパイ疑惑と真の背景
送還ペースの加速の背景には、イスラエルによる攻撃前や攻撃中にアフガニスタンからの移民がスパイ行為を行ったとする主張がありますが、これを裏付ける明確な証拠はほとんど提示されていません。このため、イランは単に不法滞在者の削減という長年の目標を実行に移しているだけであり、国内の不満を脆弱な少数派に転嫁する狙いがあるとの批判的な見方が出ています。
イラン・アフガニスタン国境での待機列
過酷な送還状況と人道的懸念
強制送還される人々の置かれた状況は非常に過酷です。現地では気温が40度に達する中、アフガニスタン国境側の受け入れセンターは対応能力を超え、苦慮しています。IOMの担当者は、多くの人々が炎天下で過ごしており、「かなり悲惨な状況だ」と述べました。IOMによれば、今年の年初からの送還者の半数が6月以降に到着しており、7月に入ってからの1週間だけで25万人が国境を越えました。
炎天下のアフガン難民受け入れ施設
被追放者の証言と国連の非難
アフガニスタン西部の町、イスラムカラの国境検問所では、手続きや輸送を待つ数百人の移民の姿が見られました。彼らの多くはイランで長年暮らし、書類がなくても半永久的な生活を送っていました。20代のバシルさんは、テヘランで警察に拘束され、拘置所で2泊しましたが、食べ物も飲み水も与えられなかったと証言しています。彼は拘置所には200人程度が収容されており、移民らが虐待されたと語りました。アフガニスタンを担当する国連高官、リチャード・ベネット特別報告者は、イランがスパイ行為を理由にアフガン人や民族的・宗教的少数派を多数拘束していると非難し、メディアによる差別助長も報告されています。
イラン政府の見解
これに対し、イラン政府の報道官は、「我々は常に良きホスト国であろうと努力しているが、国家安全保障は最優先事項であり、当然ながら違法な外国人は帰さなくてはならない」と述べています。
結論として、イスラエルとの紛争終結後にイランによるアフガン人の大規模な強制送還が急激に進んでいます。この動きはイランの長年の政策に基づくものですが、スパイ疑惑を理由とした加速には証拠が乏しく、国内問題の転嫁との批判もあります。強制送還される人々の人道的な状況は厳しく、国際機関や国連からは懸念の声が上がっています。
参考文献:
- CNN (元の記事を提供した情報源)
- 国際移住機関 (IOM)
- 国連 (UN)
- ロイター通信 (イラン政府報道官の発言源として引用)