藤島ジュリー氏の告白本裏側:サニーサイドアップ関連会社、元社員との「謝罪報酬」訴訟トラブル詳細

ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の元社長である藤島ジュリー景子氏(58)の半生を綴ったノンフィクション『ラストインタビュー 藤島ジュリー景子との47時間』(新潮社)が7月18日に発売される。著者は作家の早見和真氏。本書は、創業者であるジャニー喜多川氏によるタレントへの性加害問題に当事者として向き合ったジュリー氏の「真実の言葉」を伝えるものとされている。

インタビュー本出版を発表した藤島ジュリー景子氏インタビュー本出版を発表した藤島ジュリー景子氏

発売に先立ち、出版社のウェブサイトでは冒頭部分が公開されているが、その内容に対しては疑問の声も上がっている。「ジュリー氏と近しい小説家が聞き手となり、彼女側の主張だけが一方的に語られている」「プロデュースした嵐のメンバーとの美談や、自分や娘がいかに大変な状況だったかに終始しており、肝心の性加害問題への向き合い方についてはまだ触れられていないようだ」と指摘する社会部記者もいる。

『ラストインタビュー』だけでは見えない「性加害問題対応」の現実

本書で語られるジュリー氏の苦悩とは別に、性加害問題への対応を巡っては、知られざる別の側面が存在する。その一つが、ジュリー氏がかつて頼りにしていた人物の関連会社で起きていた訴訟トラブルだ。その人物とは、株式会社サニーサイドアップグループ(SSU)代表取締役社長の次原悦子氏である。

ジュリー氏が頼った「女性経営者」次原悦子氏との関係

次原氏は、SSUを率い、主にPR事業を展開。中田英寿氏や北島康介氏といった有名アスリートのマネジメントも手掛けた経験を持つ。また、経団連のダイバーシティ推進委員長を務め、国会で選択的夫婦別姓への賛成意見を述べるなど、日本の女性経営者の中でも特に知られた存在だ。

ジュリー氏と次原氏には深いつながりがある。同い年であり、ともにシングルマザーとして会社経営を行う立場であることから親交を深め、プライベートでも旅行に行くほどの仲だったという。SSUは長年にわたりジャニーズ事務所のPR業務を担ってきた。性加害問題への対応に追われ精神的に疲弊していたジュリー氏は、一時、次原氏に大きく依存していたとされる。しかし、現在はこの関係が解消されているようだ。

サニーサイドアップ関連会社が元社員から提訴された「謝罪業務」報酬トラブル

その次原氏の関連会社で、訴訟トラブルが発生していたと広告代理店社員が証言する。「元社員から、約束されていた報酬が支払われていないとして訴えられていたのです。その報酬は、ジャニーズの性加害問題への対応に関する業務に対するものだったそうです」。

この裁判は2023年秋に東京地裁で開始された。訴えられたのは、SSUの100%子会社であり、次原氏が取締役を務める株式会社グッドアンドカンパニー(GC)。訴えを起こしたのは、SSUの元社員であるA氏だ。

裁判資料によると、2023年春頃からジャニー氏の性加害問題が大きく報じられるようになり、A氏はこれに専念するためSSUを退社。GCと業務委託契約を結び、ジャニーズ事務所の関連業務に携わることになった。

A氏が提出した準備書面には、その主な業務内容が記されている。それは、ジュリー氏に代わって、クライアント企業に対して「謝罪」を行うというものだった。

「クライアント企業の代表取締役が体調不良だったために(中略)、クライアント企業と広告出演契約をしている100社以上の顧客企業である大手企業を訪問し、(中略)お詫びをし、事情を説明し、広告出演契約の解約を避けるという、誰にでもできるような業務内容ではなく、責任が重大な任務を請け負っていた」

これは、A氏がテレビ局や広告代理店など、100社を超える広告出稿企業のもとを回り、謝罪と説明を行った際の偽らざる心境として、裁判資料に赤裸々に綴られている一節だ。「胃の痛くなる精神的に辛い日々を過ごしていた」という記述は、この過酷な「謝罪行脚」の実態と、それを担った人物の心理的な負担の大きさを物語っている。

結論

藤島ジュリー氏の新たな書籍『ラストインタビュー』は、彼女自身の視点から性加害問題への対応や苦悩を語るものだが、その裏側では、問題の収拾のために具体的な業務を担った人々、そしてその過程で生じた別の問題も存在していた。特に、ジュリー氏が頼ったとされる次原悦子氏の関連会社が、性加害問題に関する「謝罪行脚」業務の報酬を巡って元社員から提訴されていた事実は、問題対応の複雑さと、それに伴う様々な立場の人物が直面した困難を示唆している。これは、単に一人のトップの苦悩だけでなく、問題を巡る多くの人々のリアルな現実の一端を浮き彫りにするものと言えるだろう。