元米国大統領ドナルド・トランプ氏が各国に通告した新たな関税率、特に30%という高い税率を巡り、世界中で波紋が広がっています。このトランプ関税30%に対し、特にEU諸国からは強い反発が出ており、各国は対応に追われています。石破茂総理大臣の「なめられてたまるか」という発言にも自民党内から問題視する声が出ていますが、本記事では主にトランプ関税に対するEUを含む世界各国の反応に焦点を当てます。
トランプ前大統領による30%関税通告とEUの反発を示すイメージ図
EUの強い反発と対抗措置の検討
フランスのマクロン大統領やスペインのサンチェス首相など、EU加盟国の首脳からは、トランプ氏がEUに対し「来月1日から30%の関税を課す」と発表したことへの反発が相次いでいます。EUは当初、幅広い製品に対して一律10%の関税を目指し交渉を進めていましたが、トランプ氏が送付した書簡に記されていたのは、4月に提示された20%を大幅に上回る30%という数字でした。
仏紙「ルモンド」は、この30%という税率を「顔面への平手打ちのような衝撃」と表現しました。EUのフォンデアライエン委員長は、当初14日までとしていた米国への報復関税発動猶予を来月1日まで延長する方針を示唆。残された時間で交渉による解決を目指す一方、決裂した場合には強硬な対抗措置も辞さない構えです。「必要であれば、対抗措置で対応できます」と述べています。
また、トランプ氏の書簡を受け取った直後、インドネシアとEUが包括的経済連携協定(CEPA)の締結で合意したと発表しました。これは発効後にお互いの関税を大幅に引き下げる計画であり、米国に依存せず他国との貿易を広げようとする狙いが見て取れます。
世界各国の多様な反応
この1週間で、トランプ政権が書簡を送付した相手は25の国と地域に及んでいます。それぞれの対応は様々です。ブラジル、カナダ、メキシコのように報復の可能性を否定しない国もあれば、マレーシアやカザフスタンのように報復しないことを明言している国もあります。
アルジェリアの「偽造」書簡報道とその背景
中には、国民に対し異なる説明をする国も現れています。アルジェリア大統領府は、トランプ氏からの書簡としてSNSに公開した内容が、トランプ氏が投稿した“本物”と比較して、前向きな表現にあふれ、「貿易不均衡」や「懲罰的措置」といった本来の厳しい内容とは正反対であったと報じられています。一部報道ではこれを“捏造”と指摘しています。これは、トランプ関税が国内経済に悪影響を与えることへの懸念から、高まる国民の不満を抑えたいというアルジェリア側の思惑があったためとみられます。
元米国大統領による新たな関税の通告は、各国に報復か交渉かという厳しい選択を迫り、世界経済に不確実性をもたらしています。各国の対応は分かれており、今後の動向が注目されます。