夏本番を迎え、関東地方では梅雨明けとともに本格的なセミの季節が到来します。しかし近年、東京都内の公園で「セミの幼虫を捕らないでください」という注意書きが増えているのをご存じでしょうか。この異例の呼びかけの背景には、日本の夏の風物詩と海外の文化習慣との間に生じる摩擦があります。一体何が起きているのでしょうか。
繰り返される「セミの幼虫大量捕獲」の実態と公園の対応
東京都内の公園では、夜間にセミの幼虫を大量に捕獲する行為が相次ぎ、問題となっています。東京都江東区に位置する猿江恩賜公園では、「セミの幼虫を採取しないでください。子供達がセミを楽しみにしています」と記された注意看板を園内約30カ所に設置しています。公園のサービスセンターには毎年複数の苦情が寄せられており、スタッフが夜間パトロールを強化する中で、実際に数十匹ものセミの幼虫を袋に入れている人物を目撃したケースも報告されています。目撃された人物は、そのイントネーションから中国人であると推測されることが多く、注意を受けると何も持たずに立ち去るといいます。
都内の公園に設置された「セミの幼虫を捕獲しないでください」と注意を促す看板
都内にある70カ所の都立公園を調査したところ、猿江恩賜公園以外にも同様の注意看板を設置している公園が少なくとも6カ所存在することが確認されました。公園スタッフは、これらの捕獲行為について「中国の方やベトナムの方が捕っていくというご意見を頂戴している」と証言しており、特定の外国人コミュニティによるものと認識されています。
背景にある「昆虫食文化」:SNSで拡散する現状
セミの幼虫の大量捕獲の背景には、一部の国で根付いている「昆虫食」の文化があります。特に中国やベトナムなどでは、セミの幼虫が栄養価の高い食材として珍重され、伝統的に食されてきました。中国のSNS上では、日本で捕獲したとみられるセミの幼虫を調理する動画が多数投稿されており、中には「セミの幼虫って、日本では誰も食べないよね。捨てるのはもったいない」といったコメントや、「仕事が終わって、夜にセミの幼虫を捕ります」といった報告も見られます。中国の大手メディアでもセミの幼虫が人気を集めているという記事が掲載されており、この文化がインターネットを通じて拡散している実態がうかがえます。
日本の「セミ」と海外の「セミ」の認識の違い
日本では、セミは夏の到来を告げる象徴であり、その鳴き声や羽化の様子は古くから「夏の風物詩」として親しまれてきました。子どもたちがセミ捕りを楽しむ光景は、日本の夏の日常の一部です。しかし、海外の一部の地域ではセミが単なる「昆虫」であり、食用として利用される対象であるという認識が一般的です。この文化的な認識の違いが、日本では不適切とされる大量捕獲に繋がっています。
公園側としては、セミは単なる昆虫ではなく、子どもたちの自然体験や地域の生態系の一部として大切にされるべき存在であると考えています。公園のスタッフは、「公園としては、そういった(捕獲)ことはやめていただいて、普通に夏の風物詩としてのセミを楽しんでいただきたい」と訴え、日本の文化と公園利用のマナーを尊重するよう求めています。
まとめ:共存のための理解と配慮の必要性
東京都内の公園で頻発するセミの幼虫の大量捕獲は、日本の夏の文化と一部の外国文化との間の摩擦を浮き彫りにしています。セミは日本人にとって夏の象徴であり、子どもたちの楽しみや自然教育の場を提供しています。こうした状況を解決するためには、訪日外国人や在留外国人に対して、日本の文化やマナー、そして自然への配慮について理解を深めてもらうための情報提供や啓発活動がより一層重要となるでしょう。互いの文化を尊重し、共存できる社会の実現に向けた努力が求められています。