「脂肪肝」は軽視できない病気?健康診断で見逃しがちな肝臓のサイン

肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態を指す「脂肪肝」は、かつては「単に脂肪がたまっているだけ」と軽視されがちでした。しかし近年、脂肪肝は放置すべきではない重要な病気として位置づけられるようになっています。健康診断で得られる肝臓の数値は、その危険信号を見つけるための重要な手がかりです。

健康診断で分かる肝機能の重要指標

肝臓の健康状態を測る代表的な検査項目として、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの3つが挙げられます。これらは肝細胞が損傷を受けた際に血液中に漏れ出す酵素です。特にALTは肝臓に特異性が高く、肝障害を鋭敏に示します。γ-GTPは、アルコールや薬剤による肝障害で上昇しやすいため、日常的に飲酒量が多い方には特に注目される数値です。

このほか、ALPは胆汁の流れが滞ると上昇しますが、骨の病気でも高くなることがあるため、単独での診断は難しい場合があります。総ビリルビンは黄疸の有無や胆道系の障害を反映する指標です。これらの検査値は、私たちの肝臓が現在どのような状態にあるのかを知る上で不可欠な情報を提供します。

健康診断でわかる肝機能検査値の概要を示すイメージ健康診断でわかる肝機能検査値の概要を示すイメージ

脂肪肝リスクを高める間接的要因

肝臓の健康状態を直接示す数値以外にも、脂肪肝のリスクを高める間接的な要因が健康診断で分かります。HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)や空腹時血糖、中性脂肪、HDL/LDLコレステロールといった項目は、生活習慣病と深く関連しており、これらが異常値を示す場合は脂肪肝の併発リスクが高いと考えられます。会社の健康診断(法定健診)では、AST、ALT、γ-GTPに加え、空腹時血糖、中性脂肪、HDL/LDLコレステロールの検査が必須項目として含まれており、40歳以上の労働者は全員が対象です。これらの項目も総合的に見て、肝臓への負担を評価することが大切です。

異常値から読み解く肝臓の病気

ASTやALTの数値が異常値を示している場合、いくつかの肝臓の病気が疑われます。

アルコール性肝障害の特徴

アルコール性肝障害では、γ-GTPの顕著な上昇が見られ、ASTがALTよりも高い傾向にあります。これは、アルコールが肝臓に与える独特な影響を反映したものです。飲酒習慣のある方は特に、この数値の変動に注意を払う必要があります。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の現状

一方で、肥満や糖尿病、高脂血症といった生活習慣病を背景に持つ現代人に非常に多く見られるのが、「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」です。この疾患では、ASTとALTがともに上昇しますが、特にALTがASTよりも高くなる傾向が見られます。γ-GTPも上昇することがあります。NAFLDは、単に肝臓に脂肪が蓄積しているだけでなく、放置すると肝炎や肝硬変へと進行する可能性があるため、早期の発見と適切な対処が極めて重要です。

結論

脂肪肝は、もはや見過ごして良い「単なる脂肪の蓄積」ではありません。健康診断で肝臓の異常値が指摘された場合、それはあなたの肝臓が発する「SOSサイン」である可能性が高いです。AST、ALT、γ-GTPといった肝機能検査値や、HbA1c、血糖値、脂質といった関連項目を総合的に確認し、もし異常が見られる場合は、専門医の診察を受け、早期の対策を講じることが、肝臓の健康を守る上で不可欠です。

参考文献