【ワシントン時事】少女らへの性的搾取事件で起訴され、勾留中に死亡した米富豪ジェフリー・エプスタイン氏を巡る陰謀論が、トランプ大統領を悩ませている。
【写真】勾留中に死亡した米富豪ジェフリー・エプスタイン元被告
一部支持層は「ディープステート(闇の政府)」が真相を隠していると信じ、トランプ氏に究明を要求。陰謀論に便乗し、昨年の大統領選の推進力とした同氏に一転、矛先が向いている。
騒動の発端は、司法省が今月、エプスタイン氏による少女売春あっせんで「顧客リストは発見されなかった」とする捜査報告書を発表したことだ。同省は被害者保護のため、捜査資料は公開しないと説明。陰謀論に傾倒するトランプ氏の支持層、「MAGA(マガ)」の一部がこれにかみついた。
司法省はエプスタイン氏の死因を「自殺」と結論付けた。ただ、同氏はトランプ氏やクリントン元大統領ら政財界の大物と親交があり、マガの間では「口封じのため殺された」といぶかる声が根強い。
ロイター通信の最新世論調査では、「トランプ政権が情報を隠蔽(いんぺい)している」と考える人は69%に上った。16日にはエプスタイン氏の起訴に関わった検察官が解雇されたことも新たに発覚し、疑念は深まるばかりだ。
騒ぎが収束しないことにいら立つトランプ氏は、疑惑は「民主党のでっち上げ」と主張。自身の支持者を「でたらめにだまされた弱虫」と呼び、「彼らの支持はいらない」と突き放した。
多くの米国民の関心は経済や生活の行方に集中し、この一件が政権に決定的な打撃を与えるとは考えにくい。だがトランプ氏は、エスタブリッシュメント(既得権益層)を批判することでマガの期待を集め、大統領に返り咲いた経緯がある。それが今や「体制側」に回ったと批判され、支持層との信頼関係の核が揺らいでいる点で、「エプスタイン事件」は異例の盛り上がりを見せている。