【KOREA WAVE】北朝鮮が「国内随一のリゾート地」と宣伝する元山葛麻(ウォンサン・カルマ)海岸観光地区で、実際の観光客が“演出”であったとの内部告発が報じられ、波紋を広げている。この告発が北朝鮮の最大同盟国・ロシアのメディアから出たことも注目点だ。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は7月16日付で、全国から住民が葛麻地区を訪れ、リゾートを楽しむ様子を写真付きで紹介していた。
労働新聞が描く「観光先進国」のイメージ
「労働新聞」は、航空機で到着した観光客が電気カートで移動し、携帯電話を防水バッグに入れてウォーターパークへ入場する様子、人工サーフィン場や四輪バギーを楽しむ姿など、“現代的”な観光風景を紹介した。これは、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の関心で建設されたこの高級リゾート地を通じ、国内外に「観光先進国」としてのイメージを強調する狙いがあったとみられる。
北朝鮮元山葛麻海岸観光地区で余暇を楽しむ住民、労働新聞報道の「観光客」
ロシア経済紙記者の「目撃証言」と疑惑
しかし、実際の現地の様子は労働新聞が報じたものと大きく異なっていた。7月11日から13日に北朝鮮を訪れたロシアのラブロフ外相に同行した経済紙「コメルサント」の記者は、到着時の葛麻地区ビーチに人影がほとんどなく、「労働新聞で見たような人波は一切なかった」と明かし、報道内容に疑問を呈した。
さらに記者は、宿泊したホテルの2階で、朝から終日スーツ姿の男女がビリヤードを続けていたと証言。記者会見後や夕食時にも同じ場所で同じようにビリヤードを続ける彼らの姿から、「観光客役」として配置された演出要員だったのではないかと推測している。
自由な移動が制限される北朝鮮の「選ばれた観光客」
北朝鮮では一般住民の自由な国内移動が厳しく制限されている。こうしたリゾート施設を訪れる「観光客」は、党や国家から功績を評価された人物、または企業や組織の表彰対象といった「選ばれた住民」に限られているとされる。今回の労働新聞による報道は、そのような選抜された人々を動員し、意図的に演出されたプロパガンダである可能性が高いと指摘されている。
今回のロシアメディアによる告発は、北朝鮮が国外に向けて発信する情報と現実との乖離を改めて浮き彫りにするものであり、今後の情報統制や国際社会の北朝鮮に対する認識に影響を与える可能性がある。
(c) KOREA WAVE / AFPBB News
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