参院選の潮目:保守層が「第三極」へ、物価高と外国人政策が争点に

今夏に行われる参議院選挙の投開票日が迫る中、政権与党や主要野党に属さない「第三極」と呼ばれる勢力が有権者の間で支持を急速に拡大しています。特に、物価高への対策、外国人政策、そして外交問題などが主要な争点となる中で、既存の自民党政治に対する「左傾化」への反発が保守層を中心に高まっており、これらの新興勢力が新たな受け皿となっている状況が浮き彫りになっています。経済や外交を巡る閉塞感も、この政治潮流の変化に拍車をかけています。

大阪市北区で政治家の演説に耳を傾ける参院選の有権者たち大阪市北区で政治家の演説に耳を傾ける参院選の有権者たち

自民党候補から異例の首相批判:保守層の不満の表出

7月16日、石破茂首相(自民党総裁)は、激戦区である大阪選挙区(改選数4)の新人候補を応援するため、現地入りしました。首相による演説に先立ち、比例代表で立候補している自民党の新人、元衆議院議員の長尾敬氏がマイクを握り、異例とも言える発言で自らの主張を展開しました。「中国は日本を獲りにきている。石破総裁には中国共産党に対し、もっと厳しい姿勢で臨み、日米同盟を基軸とした価値観外交を続けていただきたい」。これは、党の公認候補が選挙戦の最中に党首に対し直接的に注文を付ける、極めて珍しいケースです。

このような発言の背景には、中国軍機による自衛隊機への異常接近など、中国が日本周辺で挑発行為を繰り返しているにもかかわらず、首相の対応が毅然としていないと感じる自民党支持層の鬱積した不満があります。加えて、前政権下で成立したLGBT理解増進法に対する保守層の根強い反発も、この不満に拍車をかけています。保守系の論客として知られる長尾氏の訴えは、こうした支持層が抱える強い危機感の裏返しと言えるでしょう。衆議院で少数与党である自民・公明両党は、今回の参議院選挙で非改選議席を含む過半数(125議席)の維持を目指していますが、現時点では達成が困難な情勢にあり、選挙結果は今後の政権運営の枠組みにも大きな影響を与えることが予想されます。

「日本人ファースト」を掲げる参政党の台頭とその主張

今回の参院選における「台風の目」とも評されるのが、「日本人ファースト」を掲げ、外国人政策の見直しと消費税の段階的廃止を政策の二本柱とする参政党です。神谷宗幣代表は、首相が大阪入りした翌日の7月17日、首相と同じ大阪市内の南海難波駅前で演説を行いました。欧米諸国で移民受け入れ規制の動きが台頭していることを念頭に、「日本人ファーストは排外主義ではない。反グローバリズム。これが新しい潮流だ」と力強く訴えました。

参政党が提唱する外国人総合政策庁の設置などは、保守層からの強い支持を集める一方で、「差別主義」といった激しい反発も引き起こしています。しかし、陣営関係者からは「ここまで支持されるのは初めてのこと。私たちの活動がようやく浸透してきた証拠だ」と、確かな手応えが示されています。このような状況を受け、参政党は当初6議席としていた獲得議席目標を、一挙に20議席へと引き上げました。

揺れ動く有権者の声:政権与党への「嫌気」が支持転換を促す

長年、自民党を支持してきた京都市在住の60代男性は、今回参政党への支持に転じた理由を次のように説明しました。「大企業や大株主、外国資本を優遇し、しかも消費税の使い道を説明しない政権与党にすっかり嫌気が差してしまった」。彼の言葉は、多くの有権者が現在の政権運営に対して抱いている不満や疑問を代弁しています。既存政党への不信感や政治への閉塞感が、これまでとは異なる政治勢力、特に「第三極」への期待感を高める要因となっているのです。

参議院選挙は、単に議席数を争うだけでなく、日本政治の大きな潮流を示す試金石となるでしょう。物価高、外交、外国人政策といった国民生活に直結する課題に対し、既存政党が十分な答えを出せていないと感じる有権者は少なくありません。そうした中で、「第三極」の台頭は、日本の政治における多様性と変化への要求の高まりを明確に示しています。今回の選挙結果は、今後の日本の政治地図にどのような影響を与えるのか、国内外から大きな注目が集まっています。