NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の第27回「願わくば花の下にて春死なん」が放送され、その衝撃的な展開が視聴者の間で大きな話題を呼んでいます。特に脚本を手がけた森下佳子氏に対しては、SNS上で「人の心がないんか!」という、その巧みな筆致への称賛とも悲鳴とも取れる声が多数寄せられています。7月20日(日)は「参院選開票速報 2025」のため本編の放送は休止となりますが、第27回の余韻は深く、多くの視聴者がその行く末を案じています。
渦巻く思惑と身請けの行方:田沼の評判と誰袖の運命
第27回では、江戸の世に生きる人々の複雑な思惑が交錯しました。主人公の蔦重(横浜流星さん)は、大文字屋(伊藤淳史さん)から、人気を博す遊女・誰袖(福原遥さん)の身請け話が、田沼意次(渡辺謙さん)とその子・意知(宮沢氷魚さん)の評判次第で立ち消えになる可能性を告げられます。一方、将軍・家治(眞島秀和さん)の側用人である松平治済(生田斗真さん)は、道廣(えなりかずきさん)から蝦夷地の上知中止を訴えられ、意次が密かに進めていた蝦夷地政策の詳細を知ることになります。田沼家を取り巻く政治的、経済的な状況が、誰袖の運命にまで影響を及ぼすことを示唆しており、物語の多層的な構造が明らかになりました。
大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第27回で誰袖の身請けについて話し合う蔦重(横浜流星)と大文字屋(伊藤淳史)の場面
佐野政言の心に忍び寄る闇:「丈右衛門だった男」の扇動
物語の大きな転換点となったのは、佐野政言(矢本悠馬さん)を巡る展開です。田沼屋敷では、政言の父・政豊(吉見一豊さん)が、問題の系図を巡って暴れ、政言が制止に入る一幕がありました。系図を意次が捨ててしまっていたことから、意知は政言を取り立てようと将軍・家治の狩りに誘います。しかし、ここで過去に源内(安田顕さん)の死にも関与していたとされる謎の男「丈右衛門だった男(矢野聖人さん)」が政言に接近。この男は治済の手の者である可能性も示唆され、物語に不穏な影を落とします。
「丈右衛門だった男」は、政言が射止めたはずの獲物を隠したのは意知だったという虚偽の情報を吹き込み、さらに意次が系図を捨てたこと、政言が贈った桜が「田沼の桜」として人々に愛でられていることを巧みに伝えます。佐野家の桜が花をつけず、父・政豊から理不尽に責められていた政言の心は、田沼家への悪感情で満たされていきます。
衝撃のラストシーン:政言、意知に刀を向ける
「丈右衛門だった男」が不自然なほど田沼家の事情に詳しいことから、彼の暗躍がより一層際立ちます。憎悪を募らせた佐野政言は、ついに父・政豊の持っていた錆びた刀を研ぎ上げ、田沼意知に斬りかかるところで第27回は幕を閉じました。この予測不能なエンディングは、多くの視聴者に戦慄と衝撃を与え、次回の放送を待ち望む声がSNS上を駆け巡っています。
対照的な結末:幸せな誰袖の未来は…
一方で、この緊迫した状況とは対照的に、誰袖は幸せいっぱいの様子で吉原を後にし、“雲助様”と今宵を過ごそうとする描写がなされました。この誰袖の無垢な幸福と、佐野政言が意知に刀を向けるという悲劇的な結末との対比が、物語の深みを一層増幅させています。誰袖の行く末が、この事件によってどのように変わってしまうのか、視聴者の関心は尽きません。
森下佳子脚本の真骨頂:人の心を揺さぶる展開
今回の第27回における森下佳子氏の脚本は、登場人物の心情の機微と、緻密に張り巡らされた伏線の回収が光りました。佐野政言が抱く田沼家への憎悪が「丈右衛門だった男」によって巧妙に扇動されていく過程は、人間の心理の脆さと、情報の操作がもたらす危険性を鮮やかに描き出しています。視聴者から寄せられた「人の心がないんか!」という声は、まさに森下氏の脚本が感情を強く揺さぶり、物語に没入させる力があることの証左と言えるでしょう。単なる時代劇にとどまらない、現代にも通じる普遍的なテーマが盛り込まれていることが、多くの人々を惹きつけてやみません。
結びに
大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第27回は、田沼家の政治的な駆け引き、佐野政言の人間的な葛藤、そして誰袖の身請けを巡る運命が複雑に絡み合い、息をのむような展開となりました。特に、佐野政言による田沼意知への斬りつけという衝撃の結末は、今後の物語に大きな波紋を投げかけることは必至です。参院選特番による放送休止を挟み、次回の放送で明らかになるであろう登場人物たちの運命、そして森下佳子氏が描く物語のさらなる深みに、期待が高まります。