今夏の参議院選挙で初当選を果たした参政党のさや氏(43)が、選挙中に発言した「核武装が最も安上がり」との私見を巡り、大きな波紋を呼んでいます。これに対し、熊本市の大西一史市長(57)が自身のX(旧Twitter)上で、日本の核兵器保有は法的、現実的、そして人道的に不可能であると強く反論。日本が被爆国として堅持すべき非核原則と国際社会における役割について、明確なメッセージを発信しています。
参政党さや氏の核武装に関する私見と当選
さや氏は7月21日、自身のXアカウントで「このたびの参議院選挙において、参政党東京選挙区から初当選を果たすことができました!心の底から…ありがとうございます」と感謝を述べ、66万8568票を獲得して国会議員の座を射止めたことを報告しました。さらに、「『日本人ファースト』『消費税廃止』『子どもさんへの教育給付金』など、愛情のこもった嘘のない政治を、皆さまと一緒につくっていきたいです」と今後の政治活動への意気込みを表明しています。
物議を醸した発言は、7月3日のYouTubeチャンネル『日テレNEWS』のライブ配信番組で飛び出しました。安全保障について問われた際、さや氏は「あの北朝鮮ですらも核兵器を保有すると一応、国際社会のなかでトランプ大統領と話ができるくらいまでにはいくわけですよね。交渉ができるという。そういう状況までいくということを考えると、核武装が最も安上がりであり、もっとも安全を強化する策のひとつだとは考えています」と述べました。
一方で、これはあくまで自身の個人的見解であるとし、「参政党全体としてはですね、おそらく『核の議論を封じてはならない』と、今はまだその段階じゃないかなと思うけど、核の保有も含めて防衛力をどう構築していくか考えましょうということだと思います」と、党全体の立場とは区別する姿勢を見せていました。
参議院選挙で初当選後、支持者に向けて演説する参政党のさや氏
熊本市大西市長による「核武装不可能論」の展開
さや氏の当選を受け、改めて核武装論に異を唱えたのが熊本市の大西市長です。大西市長は7月21日にXを更新し、「あらためて言わせてもらって、よかですか?」と切り出すと、「いま『日本も核武装すべきだ』と主張する国会議員の方が当選する時代になりました。でも、私ははっきりと申し上げたい。日本が核兵器を持つことは、法的にも、現実的にも、人道的にもできません」と、さや氏の発言を一蹴しました。
大西市長は、日本が「核拡散防止条約(NPT)」の加盟国である点を強調。NPTでは、核兵器を保有できるのはアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5カ国のみと定められており、それ以外の国は「核を持たない・作らない・他国からもらわない」ことが条約で義務づけられていると指摘しました。
さらに、日本国内の核関連施設はすべて、国際原子力機関(IAEA)の厳重な監視下に置かれていることにも言及。「つまり、日本に存在する核物質は軍事転用できない仕組みになっており、核兵器をつくることは事実上、不可能です」と、現実的な側面からも核武装の困難さを説明しています。
NPT脱退が日本にもたらす深刻な影響
大西市長は、もし日本が「核を持ちたい」としてNPTを脱退した場合の仮説を立て、その影響について以下のように推測しました。
- 「世界からの国際的信頼を一気に失い国際社会から孤立」
- 「経済制裁などの深刻な圧力に直面する」
- 「周辺国との軍拡競争や緊張を招く」
- 「唯一の被爆国として築いてきた道義的立場を自ら壊す」
これらの点から、大西市長は「核兵器を持つことは、力を得ることではありません。それは、孤立し、不信と不安を呼び込む道です」と力説。核武装が日本にもたらすのは、安全保障の強化ではなく、むしろ国際社会からの孤立と更なる不安定化であるとの見解を示しています。
「核に頼らない平和」への日本の道
大西市長は、日本が目指すべきは核兵器保有ではなく、核廃絶への強いメッセージを発し続けることだと訴えます。
「核を持たない国として築いてきた日本の信頼と立場は、世界にとっての希望です。私たちは、『核を持たないからこそ守れる平和』、『核に頼らない安全保障』を目指すしか道はありません。だからこそ、唯一の被爆国である日本が核廃絶を訴え続けること。その姿勢自体が、世界平和への強いメッセージになるのです」と述べました。
そして、「日本が目指すべきは、核を持つことで安心を得るのではなく、核兵器に頼らない世界を実現する道を堅持すること。それこそが、日本に求められる本当の強さです」と結び、核兵器に依存しない安全保障の確立こそが日本の真の強さであると強調しています。
大西市長のこれまでの核問題への取り組み
大西市長は、今回の反論に限らず、以前から核問題に対して積極的な発言を行っています。今年2月には、熊本県原爆被害者団体協議会の武田頼弘会長ら4人と面会し、核廃絶や戦争体験の継承への思いを共有しました。
また、今月15日の定例会見では、6月のイラン核施設攻撃を巡り、アメリカのトランプ大統領(79)が広島、長崎への原爆投下を引き合いに出して正当化した発言について、「核抑止力による支配はあってはならない」と強く批判していました。
今回の参政党さや氏の核武装に関する発言と、それに対する大西市長の明確な反論は、日本の安全保障政策、特に核兵器の是非に関する国民的議論を深める上で重要な一石を投じることになるでしょう。唯一の被爆国として、日本が国際社会でどのような役割を果たすべきか、改めてその方向性が問われています。
情報源:
https://news.yahoo.co.jp/articles/f154549e4d5ec852c36198c40f0a51009de2d1da