7月20日に投開票が行われた参院選では、自民・公明の与党が過半数に届かず大敗を喫しました。その一方で、改選議席を大幅に増やし、合計14議席を獲得して大躍進を遂げたのが参政党です。こうした選挙結果の報道において、一部のアナウンサーが個人的な意見をコメントに交えるケースが頻発し、SNS上では「お気持ち表明」と揶揄される事態に発展。報道番組におけるアナウンサーの役割やメディアの中立性について、大きな議論を巻き起こしています。
TBS山本恵里伽アナの「想像力」発言と波紋
この議論の口火を切ったのは、7月12日放送のTBS系「報道特集」でした。番組内で山本恵里伽アナウンサーは、「外国籍の人とまったくかかわらずに生活をする人は、ほとんどいないと思うんです。自分の1票が、ひょっとしたらそういった身近な人たちの暮らしを脅かすものになるかもしれない。これまで以上に、想像力をもって投票しなければいけないなと感じています」と発言しました。この私見に対しては、SNSを中心に「特定の政党への偏向を促すものだ」として、即座に「炎上」状態となりました。
山本恵里伽アナウンサーの肖像、報道番組での発言が波紋を呼ぶ
井上貴博アナの「対話」提言と広がる賛否
山本アナの発言が物議を醸す中、7月21日には同じくTBS系の「Nスタ」で、井上貴博アナウンサーが自身の見解を示しました。井上アナは「もちろん差別とか排外主義は断固反対ですし、ノー。でも、その一方で『日本人ファースト』という言葉を聞いて、即、これは差別だと過剰反応するのは、私は個人的に違和感がある」と述べた上で、「どんな相手であっても、対話はあきらめちゃダメな気がする」と語りました。この井上アナのコメントはX(旧Twitter)上で瞬く間に拡散され、「井上アナの感覚は非常にまとも」「井上アナは当たり前の事を言ってるだけ」と擁護する声が上がる一方で、「メディアに携わる人間として問題」「アナウンサーは司会進行に注力すべき」といった批判的な意見も入り乱れました。中には「干されなきゃいいけど」と、彼の立場を心配する声も見られました。
アナウンサーの役割変化とメディアの回答
相次ぐTBSアナウンサーによる「私見表明」が話題となる中、メディアにおけるアナウンサーの役割について改めて問い直されています。この状況に対し、TBSの広報は「キャスターの発言を含めて、番組の編集過程については、お答えしておりません」との回答に留めました。しかし、あるフリーキャスターは「かつてアナウンサーは『進行役』で、意見は解説委員やコメンテーターがするものとされていましたが、偏向報道にならなければ、局アナも自分の意見を言ってもいい時代になっていると思います」と述べ、アナウンサーの役割が変化しつつある可能性を示唆しています。
参院選が導くアナウンサーの新たな形
今回の参院選を巡る一連の出来事は、報道番組におけるアナウンサーのあり方について、新たな議論の契機となりました。単なる事実の羅列に留まらず、キャスター個人の視点や解釈が、いかに視聴者に影響を与え、また受け入れられるべきか。今回の参院選が、これからのアナウンサーの新しい「形」を模索するきっかけとなるのかもしれません。メディアの信頼性を保ちつつ、多様な意見が共存する報道の未来が注目されます。
参考文献
- TBS・山本恵里伽アナウンサー「報道特集」発言で炎上! 井上貴博アナも「違和感」発言…広報はノーコメント (Smart FLASH / FLASH編集部, Yahoo!ニュース)