日本維新の会内部で、自民党および公明党との連立政権樹立に前向きな意見が顕著になっている。この動きは、大阪を首都機能代替の「副首都」とする構想の実現を最優先し、同時に党勢の低迷を打破し、存在感を再確立する契機としたいという思惑が背景にある。
副首都構想と維新の連立論の背景
日本維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)は7月22日、大阪府庁で記者団に対し、「東京一極集中の是正、国家の危機管理、経済成長を考慮すれば、副首都の形成は極めて重要である。関連法案を作成し、与党に働きかけていく」と述べ、党内に関連法案の提出を指示したことを明らかにした。これに先立ち、維新創設者である橋下徹元大阪市長は21日のテレビ番組で「連立政権に入った上で、副首都構想を実現してほしい」と発言。さらに、維新副代表の横山英幸大阪市長も25日、「大きな悲願が叶うのであれば、あらゆる選択肢を検討すべきだという意見が出るのは当然だ」と橋下氏の発言に同調するなど、本拠地である大阪から連立容認論が強く発信されている。
日本維新の会の吉村代表が大阪府咲洲庁舎で記者団の取材に応じる様子。副首都構想と連立政権に関する議論の背景。
副首都構想の具体と維新の狙い
副首都構想とは、大規模災害発生時などに首都圏の機能を代替し、東京に次ぐ経済力を持つ都市圏を大阪に形成するというものである。大阪を本拠地とする維新にとって、これは結党以来の主要な政策である「大阪都構想」の実現にも繋がる重要なステップと位置づけられている。先の参院選において、自民・公明両党は過半数割れという苦戦を強いられ、衆参両院で少数与党の状態に陥った。この苦境を脱し、安定した多数派を形成するためには連立の枠組み拡大が不可欠であり、維新はこの機会を捉え、政権に加わることで自公と協力し、長年の悲願である副首都構想の実現を目指す方針だ。
自公と維新、双方の思惑
維新自身も、参院選では関西地域以外での支持が伸び悩み、比例票は2022年の前回参院選からほぼ半減の約438万票にとどまった。躍進した国民民主党や参政党と比較すると、野党内での相対的な存在感の低下が見られる。そのため、党勢回復の糸口を掴みたいという思惑もあり、ある維新所属の大阪府議は「国として副首都構想や大阪都構想を主導できる力は非常に大きい」と政権参加への期待を表明している。自民党にとっても、政策面で共通点が多い維新は、国民民主党と並んで「最も連携しやすい相手」(閣僚談)であり、まさに渡りに船の状況だ。昨年の衆院選で維新に大阪府内の4つの小選挙区で全敗した公明党からも、維新の連立入りを容認する声が聞かれるなど、双方にとってメリットのある提携となる可能性が高い。
まとめ
日本維新の会の連立政権参加への意欲は、大阪の副首都化構想の実現と党勢回復という明確な目標に裏打ちされている。自民・公明両党も、参院選での劣勢を挽回し、安定した政権運営を目指す上で、維新との連携は有効な選択肢となり得る。副首都構想を軸としたこの連立の動きは、日本の政治地図に新たな変化をもたらす可能性を秘めている。