自民党の新総裁に選出された高市早苗氏に対し、主要なワイドショーで批判的な指摘が相次いでいます。特に、彼女の政治的スタンスや「女性像」を巡る議論は、メディアと有権者の間で複雑な様相を呈しています。本稿では、高市氏への多角的な評価、特に女性有権者の視点に焦点を当て、その背景と意味を探ります。
メディアが提起する高市氏への「女性的」批判と専門家の見解
テレビ朝日の人気番組「羽鳥慎一モーニングショー」では、高市氏の保守的な政治傾向が頻繁に取り上げられました。例えば、10月6日の放送では弁護士の猿田佐世氏が、高市氏の靖国参拝や選択的夫婦別姓への慎重な態度が「むしろ女性の活躍に足かせをはめてきた存在のようにも見える」と批判的な見解を述べました。また、10月8日には元AERA編集長でジャーナリストの浜田敬子氏が、高市氏を支持する有権者は女性よりも男性が多い傾向にあると指摘しました。
これらの批判に共通するのは、「高市氏は女性の代表ではない」「女性有権者は高市さんを支持していない」という言説です。いわゆるリベラル層や左派の有権者が高市氏を批判的に見ているのは明らかであり、その中心には彼女の政治的姿勢とジェンダーに関する認識が横たわっています。
男性社会を勝ち抜いた高市氏と「ガラスの天井」の打破
しかし、選挙コンサルタントの鈴鹿久美子氏は、この認識に一石を投じます。「大前提として自民党が究極の男社会であることは確認しておきたい」と鈴鹿氏は述べ、立憲民主党であれば女性代表の選出も自然なことだが、自民党ではかつて小池百合子氏でさえ総裁には選ばれなかったほど、「ガラスの天井」が厚かったと指摘します。
そうした中で、高市氏が党のトップに選ばれたことの意義は大きいと鈴鹿氏は評価します。彼女が政治家として「やれることは全てやり尽くして手に入れた地位」であることは間違いなく、その結果、「高市さんは生物学的には女性だけれど、政治家としては男性的に思える」と考える女性有権者が存在するのは、ある意味で自然なことかもしれません。
高市早苗新総裁を巡る女性有権者の複雑な心情
「男性社会」で戦う女性たちからの共感と期待
鈴鹿氏はさらに、「ならば女性有権者は高市さんを支持しないかと言えば、それも違う」と反論します。同じ女性議員でも、野田聖子氏には「政治家としても女性的」というイメージがある一方で、高市氏には「男性的」というイメージがあるのは事実です。しかし、鈴鹿氏の分析では、むしろ多くの女性有権者は、男性社会の中で戦い、勝ち上がってきた高市氏に期待を寄せている可能性があると指摘します。
これは、自分たち自身も男性優位の社会で苦労してきた経験があるため、会社で男性上司に悩まされている女性たちが、「高市さんは負けないでほしい」と願う心理と共通するものです。これから高市政権が発足すれば、そのやり方次第では、高市氏が女性有権者を味方につけることは十分に可能であると鈴鹿氏は見ています。
公明党との連立問題と世論の焦点
高市氏が直面する課題は、ジェンダーイメージだけではありません。公明党が連立の離脱を通告したことで、高市氏が孤立しているかのような状況も指摘されています。しかし、鈴鹿氏はこの状況に対し、女性有権者から同情票が集まる可能性は低いとの見方を示しています。
彼女によると、メディアが「自民党の政治とカネの問題」という言葉を頻繁に用いることで、支持者の意識はこの点に集中しているからです。高市政権が権力基盤の脆弱性を抱えているという分析は、既に前回の記事で詳述されており、彼女が直面する課題は多岐にわたります。
結論
高市早苗氏が自民党総裁に就任したことで、彼女の政治的スタンスと「女性像」を巡る議論は活発化しています。メディアや一部の識者からは、彼女が「女性の代表ではない」との批判がある一方で、選挙コンサルタントの鈴鹿久美子氏は、男性社会を勝ち抜いてきた高市氏に対し、同じく社会で奮闘する女性有権者からの共感と期待がある可能性を指摘します。この複雑な視点の交錯は、高市政権の今後の動向だけでなく、日本社会における女性リーダーシップのあり方についても深い問いを投げかけています。彼女がこれらの多様な視点と課題にどう向き合い、国民の支持を得ていくかが、今後の政権運営の鍵となるでしょう。
参考文献:
- Yahoo!ニュース (デイリー新潮): 「高市早苗氏」を待ち受ける“短命政権”の可能性(全2回)第2回 – 女性有権者は「高市総裁」をどう見ているか
https://news.yahoo.co.jp/articles/e8d76ff7d1add722cb1e049f56041f7b03343944