日本の森林破壊と「クリーンウッド法」の実効性:メガソーラー問題から浮かび上がる課題

北海道釧路湿原で進行中のメガソーラー建設を巡り、許可なく木を伐採したとされる森林法違反の疑いが浮上している。事業者は許認可を得たと主張するものの、法の隙間を縫うような行為が指摘されており、この問題は国内外で深刻化する違法伐採や森林破壊の現状を象徴している。日本では2018年に「クリーンウッド法」が制定され、昨年には改正・施行されたばかりだが、その実効性には依然として強い疑問の声が上がっている。本稿では、このクリーンウッド法の具体的な内容と、それが直面する現実的な課題について深く考察する。

違法伐採を助長する「法の抜け穴」:クリーンウッド法の課題

森林破壊防止には、大きく分けて二つのアプローチが存在する。一つは、伐採や開発に関する許認可条件を厳格に定め、行政が管理・取り締まる方法。もう一つは、木材のサプライチェーンに関わる事業者が、売買時に木材の合法性や持続可能性を確認し、不適切な木材の流通を阻止する方法である。

日本のクリーンウッド法は後者のアプローチを採っている。しかし、その根本的な立場は「違法伐採の禁止」ではなく、「合法木材の推進」に留まっている点が問題視されている。さらに、機能するのは事業者の登録制度に依存しており、肝心の合法性確認は「努力義務」にとどまり、違反しても罰則が設けられていない。実際、クリーンウッド法の登録業者を奨励するパンフレットには「合法性が確認できない場合でも、追加の措置は求められません」と赤字で明記されており、確認できなかった場合でも、その旨を記せば流通させることが可能であるとされている。これにより、この法律が木材の売買を実質的に妨げないことが強調されているのである。このような状況下で、近年、鹿児島でクリーンウッド法の登録業者が盗伐を行ったことが裁判で明らかになるなど、法律の限界が露呈している。

クリーンウッド法の抜け穴を示唆する、外縁部を残し内側が盗伐された森林の様子クリーンウッド法の抜け穴を示唆する、外縁部を残し内側が盗伐された森林の様子

改正後のクリーンウッド法:残る実効性の疑問

こうした状況を受け、昨年行われた法改正では、素材生産(伐採)業者が原木購入業者や木材・木材製品輸入業者に対し、合法性確認結果の情報を定期的に報告する義務が課された。また、木材購入業者も合法性確認を行う義務を負うことになった。

しかし、肝心な部分での課題は依然として残っている。木材購入業者が合法木材を利用することは、依然として「努力義務」のままである。また、伐採地域などの具体的な情報を示す必要はなく、合法性確認の根拠を販売先に示す義務も定められていない。このようなクリーンウッド法の運用実態を鑑みると、違法行為の確認は非常に困難であり、明確な証拠がない限り、盗伐などの事案が発生しても警察が介入することは難しいと予想される。

森林破壊防止への道は遠い

クリーンウッド法は、日本の木材市場における合法性向上を目指す重要な一歩である。しかし、現行の法律が持つ「努力義務」の範囲の広さや罰則の欠如は、違法伐採や森林破壊を根本的に食い止めるには不十分であると言わざるを得ない。釧路湿原のメガソーラー問題が示すように、法の隙間を縫う行為を防ぎ、真に持続可能な森林管理を実現するためには、より厳格な法規制、透明性の高いサプライチェーンの確立、そして実効性のある取り締まり体制が不可欠である。日本の森林、ひいては世界の森林を守るための課題は、依然として大きい。

参考文献