1970年の発売以来、多くの日本の子どもたちの学びを支えてきたロングセラー「ジャポニカ学習帳」が、2025年11月に半世紀を超える歴史の中で初めてとなる大幅な表紙のリニューアルを実施します。これまでの特徴であった昆虫や花のリアルな写真から、親しみやすいイラストへと一新される今回の変更は、単なるデザインの刷新に留まらず、現代の教育環境と子どもたちの学びを深く見つめ直した結果と言えるでしょう。この歴史的な転換の背景には、一体どのような狙いが込められているのでしょうか。
ジャポニカ学習帳、50年以上の歴史と今回の「大改革」
累計14億冊という驚異的な販売実績を誇るジャポニカ学習帳は、ただのノートではありませんでした。表紙を飾る写真家の故・山口進氏が撮影した昆虫や花の写真は、子どもたちに自然の息吹と知識を届ける「学習百科」としての役割も担っていました。また、その象徴的な緑色のデザインは「立体商標」としても認められ、抜群の知名度と信頼を築き上げてきました。
そんな国民的学習帳の表紙が、この秋、大きく様変わりします。今回のリニューアルの最大のポイントは、長年親しまれてきた写真をイラストに変更する点です。この決断について、ショウワノートのステーショナリー事業部・岸田愉美さんは「単なるデザインの変更ではなく、詰め込み教育から発想を育む教育へと移行する現在において、子どもたちの学びをサポートするために進化しようという狙いがあります」と語っています。
ジャポニカ学習帳の旧表紙(左)と、リニューアル後の新デザイン(右)。新表紙は「共生」をテーマにしたイラストが特徴。
新表紙テーマは「共生」―発想育む教育をサポート
新しいジャポニカ学習帳の表紙に貫かれるテーマは「共生」。これは、自然の動植物が互いに影響し合いながら生きる姿を通じて、子どもたちに「多様性」の重要性や「調和」して暮らすことの大切さを伝えるメッセージです。具体的には、「バケツランとシタバチ」のイラストのように、花と昆虫の関係性を描くことで、生命の神秘と相互依存の関係を表現しています。この「共生」というテーマは、奇しくも前身の表紙を彩った山口進氏の生涯の撮影テーマとも合致しており、伝統を重んじつつ未来へと繋ぐ姿勢がうかがえます。
イラストが伝える「多様性」と「好奇心」への願い
イラストには、植物などに顔をつけ、物語性を持たせることで、子どもたちの好奇心を一層刺激する工夫が凝らされています。岸田さんは「大人が子どもたちの『好き』という可能性を奪ってほしくない、という願いを込めています」と述べ、新デザインが子どもたちの自由な発想や探究心を育むきっかけとなることを期待しています。
この革新的なプロジェクトのアートディレクションを担当したのは、デザインチーム「minna(ミンナ)」。そして、イラストは絵本「パンダ銭湯」などで知られる人気ユニット「tupera tupera(ツペラ ツペラ)」が手掛けています。minnaからの推薦を受け、ショウワノートもtupera tuperaの「プロジェクトの本質をわかりやすさと楽しさをもって伝わりやすくする表現力」「歴史ある想いを引き継ぎつつ、軽やかにポップに表現してくれるスタンス」「何十年先の子どもたちにも響く普遍的で魅力のある絵の力」といった点に深く賛同し、今回のタッグが実現しました。
新時代の学びを彩るジャポニカ学習帳
今回のジャポニカ学習帳の大幅リニューアルは、単なる表紙の変更以上の意味を持っています。それは、時代の変化とともに教育のあり方も進化する中で、子どもたちが主体的に学び、多様な価値観を理解し、創造性を育むためのサポートを強化しようとするショウワノートの強い意志の表れです。新しい「共生」のテーマを掲げたイラスト表紙のジャポニカ学習帳は、これからの日本の子どもたちの成長と、より豊かな社会の実現に貢献していくことでしょう。