今年メジャーデビュー10周年を迎えた人気ロックバンド、Mrs. GREEN APPLE(以下、ミセス)が7月26日と27日に、神奈川県横浜市の山下ふ頭特設会場で野外ライブ「MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE 〜FJORD(フィヨルド)〜」を開催し、2日間で計10万人を動員しました。ライブはWOWOWでの生中継に加え、複数の配信プラットフォームや全国の映画館でのライブビューイング、さらにはJOYSOUNDの「みるハコ」でのカラオケビューイングも同時に行われるなど、その規模は過去最大級でした。横浜駅や桜木町駅を起点に、ライブ会場の山下ふ頭まで約4kmのエリアで楽しめる企画も実施され、街全体が“ミセス一色”に染まりました。しかし、この大規模なアニバーサリーライブは、大盛況の裏で多くの“苦情”が殺到するという予期せぬ事態を引き起こし、波紋を広げています。
広範囲に及んだ騒音被害の実態
今回のライブで最も問題視されたのは、両日ともにライブ中に発生した“音漏れ”による騒音です。土日ともに18時から21時に行われたライブの重低音が、「すぐ近くで車が大音量で音楽を流しているような」と表現されるほど広範囲に響き渡りました。SNSの投稿によると、横浜市周辺だけでなく、隣接する川崎市や遠く離れた東京・蒲田の方まで聞こえたとの報告もあり、その騒音の大きさがうかがえます。Yahoo天気の現在地の“今の天気”を書き込めるアプリには、「騒音すごい」といったリアルタイム情報が地図上に溢れかえりました。
神奈川県では、日産スタジアムのような野外スタジアムでアーティストのライブが頻繁に開催されますが、これほど広範囲かつ深刻な騒音が指摘された例はこれまでほとんど耳にしません。今回のケースでは、普段ライブが行われない場所に特設会場を設置したことが、運営側の騒音対策における想定不足を招いた可能性が指摘されています。
Mrs. GREEN APPLEの横浜山下ふ頭野外ライブの様子。大規模開催で騒音苦情が相次いだ現場。
SNSで「ミセスの騒音」がトレンド入り
X(旧Twitter)上では、一時「ミセスの騒音」がトレンド入りするほど、周辺エリアで音漏れを耳にしたユーザーからの報告が相次ぎました。「ほんとにうるさくてキレそう。昨日も聞こえてたのに今日風向き完全にこっちだから全部聞こえてる。ミセス好きだけどこのクッソうるさい騒音のせいで嫌いになりそう。事前に聞こえるとか言われてたならいいけどなんもなし。光も激しすぎる」といった直接的な不満の声や、「ミセスだろうが、他のアーティストだろうが、15km先まで届く重低音のみが2時間も続くのは、音漏れじゃなくて騒音」と音漏れのレベルを超えた騒音であることを指摘する投稿が見られました。「ミセスの音漏れマジで輩が出すような重低音ばかり聞こえて本当に不愉快なんだけど!!!!10キロも離れてんだぞ!!!」や、「家の中に入ると重低音だけ響いて辛い」といった、日常生活への影響を訴える切実な声も多数上がりました。
横浜市の対応と今後の展望
この騒音問題を受け、山下ふ頭を管轄する横浜市に問い合わせたところ、担当者からは「苦情が相当数来ている」という認識が示されました。市役所のコールセンターを含め、様々な部署に苦情が寄せられており、現時点では正確な件数は集計中であるものの、その多くが「音がうるさい」という内容であることが確認されています。
市としては、事前に騒音対策について「当然、市の条例で色々と基準とかあるので、そういったものはお渡しをして、しっかりとした配慮は求めてきたところではあります」と説明。しかし、実際の状況が基準を超える可能性については、「モニタリングはしてきてないのですが、しっかり条例に沿ってやってくださいということでお願いはしています」と述べ、事後対応の必要性を認識している様子です。
市からの主催者への要請と今後の対策
横浜市は、今後の対応についてもすでに検討を進めています。市に寄せられた苦情内容は、イベントの主催者へきちんと伝えられ、今後、他のイベントも含め、山下ふ頭でイベントを行う際には、今回の事案を踏まえて「さらなる対策や配慮」を求めていく方針です。市は「今後また他のイベントやる際にも、そういったことはきちんと求めていきたいなという風には思ってますし、しっかり今回の事業主催者さんに対しては”強い声があった”ということで、その主催者さんがやる次のイベントにきちんとそれを活かしてやっていただきたいということは求めていきたい」と、主催者側への強い要請を行う意向を示しています。
結論
せっかくのメジャーデビュー10周年を記念する大規模イベントに“ケチ”がついてしまった形となったミセスと運営サイド。しかし、今回の経験は、今後同様の野外イベントや大規模な催しを企画する上で、騒音対策や近隣住民への配慮の重要性を改めて認識する貴重な機会となるはずです。アーティストの素晴らしいパフォーマンスを安全に、そして周辺環境にも配慮しながら楽しめるイベントの実現に向け、今回の事案が今後の改善に生かされることを期待します。
参考文献: