磐田消防指令センター、119番通報対応不備で男性死亡 「先入観にとらわれた」と過失認める

静岡県磐田市の中東遠消防指令センターが昨年10月、同県掛川市に住む50代男性の家族から緊急の119番通報を受けながらも、救急車の出動を見送り、その後に男性が死亡していたことが判明しました。センター側は、対応に問題があったことを認め、「緊急ではないという先入観にとらわれた」「容体を詳細に聴取すべきだった」と反省の弁を述べています。

初動対応の不適切さと「介護タクシー」の提案

関係者への取材によると、この痛ましい事態は昨年10月15日午後5時25分ごろに始まりました。男性の母親から「2日間ぐらい動けない」「足を痛がっている」との119番通報がありました。しかし、指令員は男性の具体的な容体について詳しく聴き取ることなく、緊急性が低いと判断しました。その際、通報者からサイレンを鳴らさずに来てほしい、あるいは特定の病院への搬送を希望するといった要望があったことも、この判断に影響したとされます。指令センターは、緊急搬送の代わりに介護タクシーなどの利用を勧め、救急車を出動させませんでした。

静岡県磐田市に位置する中東遠消防指令センターが入る市役所福田支所。救急出動見送りの問題が起きた施設。静岡県磐田市に位置する中東遠消防指令センターが入る市役所福田支所。救急出動見送りの問題が起きた施設。

中東遠消防指令センターがある静岡県磐田市役所福田支所=11日

容体悪化と悲劇的な結末

最初の通報から約5時間半が経過した頃、男性の母親から再度119番通報が入りました。「容体が悪化して、もうほとんど動かない」という緊迫した訴えに対し、指令センターは初めて事態の深刻さを認識。腹痛による急病と判断し、ようやく救急車を派遣しました。しかし、男性は既に心肺停止状態に陥っており、搬送先の病院で死亡が確認されるという最悪の結果となりました。

組織内の反省と今後の課題

この一件に対し、対応した指令センターの係は、後のてん末書で自身の対応の誤りを明確に認めました。「緊急ではないという先入観にとらわれ、通報者の訴えを十分に深掘りしなかったこと」「患者の容体をより詳細に聴取すべきだった」と記述しており、初動判断における専門性と冷静な状況把握の欠如が浮き彫りとなりました。今回の事案は、緊急時における情報収集の重要性、そして指令員の判断が人の命に直結するという重大な責任を改めて浮き彫りにするものです。

参考資料

Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/f86e02b94b03df09cbc1e3157f02752cc2edb2e5