テレビ番組『料理の鉄人』などで広く知られる周富輝氏がオーナーシェフを務める人気中華料理店『生香園』の本館が、2025年8月末をもって閉店することが明らかになった。横浜中華街からほど近い馬車道に位置し、創業から半世紀以上にわたり広東料理の名店として多くの客に愛されてきたこの店に、一体何があったのか。店頭には閉店を告げる一枚の張り紙が静かに貼られていたという。
「生香園」本館、長年の歴史に幕を下ろす
『生香園』本館は1971年に創業し、横浜中華街に隣接する馬車道で長らく営業を続けてきた。その本格的な広東料理は連日多くの客で賑わい、近隣には系列の新館もオープンするほどの人気ぶりを誇っていた。しかし、突然の「2025年8月末をもちまして閉店する運びになりました」という告知は、長年の常連客に大きな驚きを与えている。この閉店は、横浜の食文化の一時代を築いた名店の終焉を意味するだろう。
生香園本館の閉店を告げる張り紙と店舗外観
テレビで活躍した周富輝氏の功績と過去の挫折
オーナーシェフの周富輝氏は横浜で生まれ育ち、父が経営する『生香園』で料理の腕を磨いた。彼を一躍有名にしたのは、1990年代に放送されたバラエティー番組『浅草橋ヤング洋品店』での活躍だった。兄である周富徳氏のブレイクをきっかけにテレビ出演が増え、プロの料理人としての腕前と卓越した話術で人気タレントの地位を確立。1993年からは高額納税者公示制度(長者番付)の常連となるなど、その勢いは止まらなかった。しかし、1997年から3年間にかけて伝票を調理場で燃やすなど、売上の一部を除外していたことが発覚。2001年には法人税約4700万円を脱税したとして有罪判決を受けている。
報じられた食品偽装疑惑とその波紋
『生香園』本館については、昨年NEWSポストセブンが10年以上前から行われていたという食品偽装疑惑について、元従業員の告発に基づきその実態を報じた。元従業員は取材に対し、「高級食材の『蟹の卵』を『ニワトリの卵』に、『うずらの挽肉』には『豚の挽肉』を使用していました。高価なメニューほど安価な代用食材を使用することで、利幅を大きくしていた」と、その苦しい胸の内を明かしていた。
これに対し、周富輝氏自身は食品偽装疑惑について、「(ほとんど)出ないメニューは売り切れにしている」「コックが(食材が)ない時にやっちゃったみたい」と説明。一部のメニューについては、調理場の料理人が忖度して別食材を使用したことがあったと認め、現在は該当するオーダーを断り、客の要望によっては別の食材で代用することもあると語っていた。
終わりに
長きにわたり横浜の食文化を支えてきた人気中華料理店『生香園』本館の閉店は、多くの常連客に惜しまれつつも、オーナーシェフ周富輝氏の過去の脱税や食品偽装疑惑といった影も落としている。この出来事は、単なる店舗の閉鎖に留まらず、日本の外食産業における信頼性と企業倫理の重要性を改めて問いかける象徴的な事例と言えるだろう。