連日暑い日が続く夏。昨今の夏は異常な高温となる傾向にあり、2025年は道央でも40度に達するという記録的な年となりました。もはや北海道ですら、エアコンは不要と言えない状況となっています。
鉄道車両を見回すと、現在新製されている車両では冷房は必需品で、三大都市圏のJR線や大手私鉄を走る車両では、当たり前のように冷房装置が搭載されています。しかし、全国を見渡せば、まだまだ非冷房の車両が運用中の路線も存在します。
首都圏で非冷房車が走る路線として知られているのが、山万ユーカリが丘線。千葉県佐倉市のニュータウンであるユーカリが丘を走る新交通システムで、デベロッパーである山万自体が運営しているという特徴があります。ユーカリが丘線の車両は、1982年の開業当時から使われているものですが、現在に至るまで客室用の冷房は搭載されていません。その一方、近年のユーカリが丘線では、少しでも快適に乗車するためのサービスとして、毎年夏には車内に「おしぼり」や「うちわ」を設置した「おしぼり列車」を運転しています。
青森県を走る弘南鉄道、北海道を走る道南いさりび鉄道、そして札幌市営地下鉄も、営業車両はすべて非冷房です。特に札幌市営地下鉄は、現在の日本では唯一、非冷房車しか使用されていない地下鉄となっています。札幌の気候は比較的冷涼であるということから、2015年デビューの最新の車両まで、冷房は搭載されてきませんでした。しかし、近年の酷暑においては札幌であっても非冷房車は厳しいようで、2030年度以降に南北線へ投入される新型車両では、ついに冷房が搭載されることとなりました。
JRでは、非冷房の「電車」はすでに全車が引退していますが、「気動車」はJR北海道のキハ40形、キハ54形、キハ150形が現役。前2形式は国鉄型のためやむなしと言えますが、キハ150形は、1993年に10両が製造された100番台が、比較的新しい車両ながら全車非冷房となっています。
このほか、JR東日本の高崎地区や大井川鐵道で使われている旧型客車や、箱根登山電車のモハ1形・モハ2形なども非冷房車。ただし、暑い時期の非冷房車の運用は難があるためか、高崎支社の車両ように、夏季の運用は控えられている場合もあります。
西中悠基